Giorgio Caproni:Donna che apre riviere
海岸を開く女
君は海辺の女、
海岸を開く女。
白い朝の
空気は、君の塩の
空気--それは風をうける
帆、広がる旗、これほど
明るいたっぷりとした君の服。
(訳者妄言)
ジョルジョ・カプローニの詩。(ゴッツァーノの詩は、いったんお休みします。後日、ふたたび扱う予定です)。以下、シモーナ・コスタの La poesia italiana del novecento (Arnoldo Mondadori Scuola) にしたがってカプローニの略歴を記す。
カプローニは、1912年トスカーナの港町リヴォルノ生まれ、1990年にローマで死去。10歳で両親とともにジェノヴァに引っ越し、ジェノヴァが「心の街」(citta' dell'anima)となった。
コンセルヴァトリオに通いヴァイオリンや作曲を学んだが、家庭の経済状況が不安定であったため、ヴァイオリニストから店員まで様々な職業をへて、小学校教員をアルタ・ヴァル・トリッビアで務めた際に、将来夫人となるリーナと出会い、2人の子供をもうけた。
その後、ローマに移り、第二次大戦中は抵抗運動に参加。1945年にはローマに居をかまえ、教職と並行して新聞、雑誌の記事を書き、フランス文学、プルースト、シャール、セリーヌ、モーパッサン、ジュネの翻訳をものした。
カプローニは詩人として、Come un 'allegoria (1936)、Ballo a Fontanigorda (1938) でデビューした。カプローニの詩は canzonetta や sonetto という形式を採用したこと、美しい調べに欠けてはいないこと、また物語性を持っていることからサーバの詩と並べて評されるようになった。
実際、彼の詩を批評するものはカルドゥッチに言及したり、同郷のリグーリアの詩人ボイネやスバルバロに言及したりした。
その後1959年にはIl seme del piangere 、1965年には Congedo del viaggiatore cerimonioso & altre prosopopee を出版した。
彼の詩のテーマは、都市、母、旅に集中し、それが相互に絡み合っている。
さて、'Donna che apre riviere' は、1941年の詩集 Frizioni (摩擦)に収められた詩である。
詩は、わかりやすい語を用いながら、女性と海の持つ始原性を相互に照らしだしている。
原文は
Sei donna di marine,
donna che apre riviere.
L'aria della mattina
bianca e' la tua aria
di sale--e sono vele
al vento, sono bandiere
spiegate a bordo l'ampie
vesti tue cosi' chiare.
海辺の女性が、その光景の広がりの大きさのなかで外形の細部が描かれるというよりは、むしろ寓意的に開かれた、開放的な雰囲気と、陽光の明るさによって、光る海と重なる存在として浮かび上がるような詩である。
形式的には7音節詩句(settenari)が多く、また enjambement (行跨り)が多い。
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コメント
待ってました! Caproni,また世界が広がりました。
enjambement懐かしいです。この、詩型のことも、これからいっそう注意して読みます。音読の習慣もつきました、はおこがましく、つけて、いっそう、参ります。また毎日いっそう楽しみになりました。
投稿: attacco_ma | 2009年3月 8日 (日) 16時09分
attacco_ma さん
詩人1人1人は、つくづく、別の世界があると思います。所変われば品変わると言いますが、詩人変われば、世界が変わる、と。
(ご投稿の重複の分は削除させていただきました。)
投稿: panterino | 2009年3月 8日 (日) 22時06分
いつも楽しくイタリアの詩のブログを拝見させています。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ「ローマ悲歌」に、"Eine Welt zwar bist du, o Rom, doch ohne die Liebe wäre die Welt nicht die Welt, wäre denn Rom auch nicht Rom." - Johann Wolfgang von Goethe, "Römische Elegien" 「ローマよ、おまえは確かに世界に等しい、だが愛なしには世界は世界ではなく、ゆえにローマもローマではないだろう。」がありますが、新しい愛へと旅立つような詩が確かに多い文化のフマニテートを見ているようです。
投稿: 轟俊 | 2009年3月 9日 (月) 00時46分
轟俊さん
ゲーテの詩のご紹介ありがとうございます。恥ずかしながら、初めて知りました。哲学的なフレーズですね。
投稿: panterino | 2009年3月10日 (火) 08時18分