Giacomo Noventa: Dove i me versi
私の詩はどこに私を...
私の詩はどこに私を連れて行くのだろう、
君たちのように、詩を撫でまわしていたら、
僕には判らない、兄弟たちよ。
僕の価値観の限界に触れ、
きっと僕自身、自らを欺き、
芸術を神聖と信じ、栄光を
名誉より重んじる。
ああきっとそうすると判るのだ、
今よりも、私のより深くで、
詩が決して与えられぬものを。
聖人がどんなかは知らないが、
聖人たちの前に頭(こうべ)を垂れ、
私の魂のために祈るだろう、
私の祈りのなかに、自分の声は聞かずに。
(訳者妄言)
ジャーコモ・ノヴェンタの詩。詩集Versi e posie (1956)から。
ジャーコモ・ノヴェンタは1898年生まれ。本名は Giacomo Ca' Zorzi だが、生まれ故郷の Noventa di Piave (ヴェネツィア県)からペンネームをつけた。
第一次大戦に志願兵として参戦し、1923年トリノ大学を卒業。トリノで、ピエロ・ゴベッティや雑誌《Rivoluzione liberale》に関わり、ジャーコモ・デベネデッティやマリオ・ソルダーティと親交を結んだ。
1925年から1935年ヨーロッパ各地に滞在したが、特にパリに長くいた。1935年帰国すると、ピエモンテに留まることを禁じられた。
1936年フィレンツェで、雑誌《ソラリア》の編集長だったアルベルト・カロッチとともに、雑誌《La Riforma letteraria》(文学改革)を創刊した。レアリズモやモラリズモをかかげたノヴェンタの姿勢は、フランコ・フォルティーニやジェーノ・パンパローニを引きつけた。
しかし、雑誌はファシスト政権により発売禁止となり、1939年に逮捕され、大学のある町には住むことを禁じられた。
戦後も他の雑誌を創刊し、カトリック、自由主義、社会主義を総合した独自の立場を貫いた。1960年にミラノで亡くなった。
彼の詩は1936年から雑誌《Riforma letteraria》にエミリオ・サルピのペンネームで掲載されはじめた。1956年、詩集 Versi e poesie
を出版した。
ノヴェンタは、同時代の詩の傾向にあらがい、エルメティズモから距離を置き、さらにはあらゆる20世紀の傾向にも与せず、18,19世紀のゲーテやハイネの影響を受けた。
というわけで、彼の方言の選択は、自分が認めない文学言語の拒絶と結びついている。彼は自分の方言と、ヴェネツィア方言、パドヴァ方言を混ぜ、イタリア語も方言化して取り入れている。
この詩は、彼の反エルメティズモ、彼の詩法の宣言となっている。芸術を神聖(sacro, scralità)で栄光にみちたものとみるエルメティズムから距離を取っている。彼にとっては聖人(santità)のほうが価値があるという態度をとっている。
ヴェネト方言とイタリアが混在するオリジナルと、メンガルドによるイタリア語訳をあげる。
まずオリジナルから。
Dove i me versi me portarìa,
Acarezandoli come voialtri,
No' so fradeli.
Tacodi i limiti del me valor,
Forse mi stesso me inganarìa,
Crederìa sacra l'arte, e la gloria,
Più che l'onor.
O forse alora mi capirìa,
Megio d'ancùo, più dentro in mi,
Quelo che i versi no' pol mai dar.
Pur no' savendo esser un santo,
A testa bassa de fronte ai santi,
Par la me ànema mi pregarìa,
No' più ascoltandome nel mio pregar.
つぎに、P.V.メンガルドのイタリア語訳(Poeti italiani del Novecento, Mondadori, Milano, 1978)。
Dove i miei versi mi porterebbero,
accarezzandoli come voi,
non so, fratelli.
Toccati i limiti del mio valore,
forse io stesso m'ingannerei,
crederei sacra l'arte, e la gloria,
più che l'onore.
O forse allora capirei,
meglio di oggi, più dentro in me stesso,
quello che i versi non possono mai dare.
Pur non sapendo essere un santo,
a testa bassa di fronte ai santi,
io pregherei per la mia anima,
non più ascoltandomi nel mio pregare.
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コメント
興味深い詩人。そしてイタリアの、イタリア文化の深さを実感しました。波乱の生涯を知ると、聖人という言葉も詩の始まり方も創作の態度を知らされます(私の詩はどこに私を連れて行くのだろう。
投稿: giacomal | 2009年3月19日 (木) 13時01分
giacomal さん
おっしゃる通り、この詩は詩論になっている詩で、彼の詩論、詩に対する考え方には、彼の生き方が強く反映されていると思います。
芸術至上主義やある種の韜晦を嫌っているようですね。また、ヴェネト州のカトリックの伝統の強さも感じますね。
投稿: panterino | 2009年3月19日 (木) 21時27分