Caproni: Anch'io
私も
私も試してみた。
まったく爪の
戦いだった。今はそれが判る。誰も
地の壁に
穴をあけることはないだろうと。
(訳者妄言)
カプローニの詩集 Il muro della terra (1975) から。詩集のタイトルがこの詩の一部(地の壁)となっているが、そもそもダンテの『神曲』の地獄篇第10歌2行からの引用である。地の壁とは、地獄の最下層のルチーフェロ(悪魔)が墜ちた場所である。
運命と比する時、人間の力は爪にもたとえるべき小ささだ、ということだろう。
原文は、
Ho provato anch'io.
E' stata tutta una guerra
d'unghie. Ma ora so. Nessuno
potra' mai perforare
il muro della terra.
2行目は a の母音、そして ta が支配的な音になっている。4行目は p の音が allitterazione となり、また ra の音が繰り返され、それは2行目の guerra, 3行目の ora, さらに5行目でも terra となって現れている。
短い詩だが、ダンテの引用、濃密な音のテクスチャーが味わいを深めている。
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コメント
賛成です。じつにいろいろなこと思います。ふとむかしあった『壁の穴』というスパゲッティのこと連想いたしました。それからー音の響きのみごとさにも感じいりました。perforareー美しい。少しも古くさくないイタリア語今までの詩ぜんぶそう感じられました。
投稿: figliagiglia | 2009年3月11日 (水) 22時11分
figliagiglia さん
おっしゃる通り、古典を踏まえているけれど、古くさくないですね。
むしろ、シンプルなものを組み合わせた豊かなハーモニーが鳴り響いていますね。
投稿: panterino | 2009年3月12日 (木) 02時44分