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2009年3月20日 (金)

Albino Pierro: T'aspette

      君を待つ

泣いているの?
僕が死んだなんて誰が言った、
愛しい人よ?
僕はまだこの世にいて
君を待っている。

君が
足に翼を付けなければいけないんだ。
僕はたくさん歩き
風を超え、
今は熱を感じる。

君の前にあるすべてのものを
飛び越えるのに何をためらっているの?
死を笑わせるこの涙は、
行くにまかせよう。
急いで、さあ、
愛しい人、
この喪を僕から取りはらって、
たとえ君がそれが濃密になるのを感じても、
僕は、家々を倒すことなく
揺らす地震に、耐えられない。


(訳者妄言)
アルビーノ・ピエッロの詩。詩集 I'nnammurète  (1963)から。ピエッロは1916年バジリカータ州マテーラ県トゥルシで生まれたが、生後数ヶ月で母が亡くなり、伯母たちに育てられる。このトラウマティックな事件が彼の詩に影を落とし、死のテーマが彼の作品には浸透している。

1944年にローマ大学を卒業し、その地の高校で歴史と哲学を教えつつ詩作を続けた。1995年、ローマで死去。

1946年にイタリア語による詩集 Liriche でデビューする。1960年の詩集 'A terra d'u ricorde から方言による詩集に転換する。

トゥルシの方言が文学に表現されたのは初めてのことで、書かれた伝統は無かった。そこにピエッロの言語表現のオリジナリティーがある。手つかずの話し言葉により、原始的世界に降りていくことを可能になっているのだ。

こうした新たな言語の発見に伴い、ピエッロの詩は、じょじょに民俗的な要素から解放されて、より内的な深みをもったものに変容していった。

この詩では、語り手は死んでしまったように見えるが、実は死んでいない、だから悲しまないで、自分のところに早く来てくれと、愛する人に呼びかけている。語り手は愛する女性に語りかけている。足に翼をつけてというのは、想像力ではばたくということであろう。

愛と死、喪失(「喪」)と想像力による悲しみの超越がテーマの詩。最後の地震のイメージは、存在の実存的不安を表象するものだろう。

オリジナルと詩人自身によるイタリア語訳を以下にあげる。

まず、オリジナルから。

Chiangese?
E chi t'ha ditte c'agghie morte,
amore?
Ci sùu ancore a lu munne
e t'aspette.

               Si' tu
ca l'ha' 'a mitte i scille a lu pére:
ié caminèje tante,
l'agghie varchète u vente
e mo mi sente 'a fréva.

Cché aspèttese e nuit lle zùmpese
tutt'i cose ca tròvese cchinnante?
Làssele l' stu chiante
ca le fè rire 'a morte;
e po fa' preste, amore,
curre,
levammille stu lutte:
si pure tu le sèntese ca 'nfàllete
lé nun risiste cchiù nd'u terramote
ca trincuulte i chése e nun lle sciàllete.

次に作者自身によるイタリア語版:

Piangi?
E chi ti ha detto che sono morto,
amore?
Ci sono ancora al mondo
e ti aspetto.

Sei tu
che devi mettere le ali al piede:
io ho camminato tanto,
ho superato il vento
e adesso mi sento la febbre.

Che aspetti a saltare
tutte le cose che trovi davanti?
Lascialo andare questo pianto
che fa ridere la morte:
e fa presto, amore,
corri,
toglimi questo lutto:
se pure tu lo senti che infittische,
io non resisto più nel terremoto
che scuote le case senza farle crollare.

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Pierro, Albino (ピエッロ)」カテゴリの記事

コメント

 いちど送信しましたが、元原がどこかへ飛んで行ってしまった、ようで、もういちど。?
 死せる詩人が恋人に呼びかける。という状況設定をイタリア詩人ではない詩人の詩集で印象深く読んだことがありました。創造の七転八倒を言っている、のではないか。いま思います。地震、マテーラ、オリジナル言語の音。行きたい!です。

投稿: mattanna | 2009年3月21日 (土) 09時58分

mattana さん

マテーラの町は洞窟住居があって独特ですね。
独特な風景、独特な言語、たしかに現地で聞いてみたいものですね。

死せる人の魂が生者に語りかけるという設定は、哀切なものがあり、いくつもの国でそういった詩が書かれたのでしょうね。

投稿: panterino | 2009年3月22日 (日) 02時22分

はじめまして。

今年の8月、Pierroの生まれたRabatana(Tursiの街の背後の岩山のてっぺんの、もっとも古い地区)にただ一軒あるホテルに一泊しました。このホテルを開いたまだ若い主人は土地の文化の復興に力を入れている人物で、併設されたリストランテでは、彼自身の(身振り手振りを入れた)朗読によるPierroの詩をいくつか聴くことができました。屋外のテラスで、月明かりと蝋燭の灯りのもと、夢のようなひとときでした。

そのホテルはPalazzo dei Poetiといいます。
また偶然発見したのですが、YouTubeに、私たちが訪れた一週間ほどあとのこのホテルでの主人の朗読を撮影した映像が投稿されていました。

http://www.youtube.com/watch?v=TxZ0s0U_dH8

2分30秒あたりからご覧になってみてください。

投稿: Bowles | 2009年9月15日 (火) 10時39分

Bowles さん

貴重なお話ありがとうございます。Tursi の町を訪れたこともなく、Rabatana という地区、岩山のこと、初めてうかがいました。

また、YouTube のご紹介ありがとうございます。イタリア語から、方言に劇的に変わりますね。正直、方言の部分の理解は困難ですが、その音の響き、リズムに接することができて嬉しいです。

朗読の会場の雰囲気も、堅苦しくなく、自然で、とてもいいですね。いつか行ってみたいです。

投稿: panterino | 2009年9月15日 (火) 23時09分

パピヨンと申します。ヤフーブログ「蝶のひとりごと」を書いています。ぜひこのブログを紹介させていただきたいと思います。現代イタリア詩いいですね。日本国際詩人協会にご興味ありましたらwww.ama-hashi.com覗いてみてください。イタリア詩人もぜひご紹介したいです。

投稿: パピヨン | 2011年4月 4日 (月) 07時23分

パピヨンさん

ご紹介いただけるのは大変嬉しいです。
最近、休眠状態でお恥ずかしいのですが。

ブログ「蝶のひとりごと」拝見しました。
「鳩を抱いたお地蔵さま」心にしみます。
詩は、地震や津波の前には無力でしょうが、人が生きていくときに必要なぬくもりのかけらにはなりうると信じています。

投稿: panterino | 2011年4月 4日 (月) 11時32分

ありがとうございます。詩の中には「想い」が封じ込められていて、読めば迸り出てきます。たとえ十年、百年たっても同じです。だからこそ、この仕事をしています。

まて、海外詩人との交流を目的として日本国際詩人協会を運営しています。「詩の架け橋:天橋」の編集もしています。来年に Davide Rondoniの詩を掲載することを考えています。イタリア詩人は初登場ですよ。

投稿: パピヨン | 2012年4月15日 (日) 21時40分

パピヨンさん

日本国際詩人協会、ご発展を祈念いたします。
Davide Rondoni 教えていただきありがとうございます。

このブログがまったくの休眠状態で申し訳ないです。管理人は、最近、オペラのリブレットの詩的側面を探求しております。

投稿: panterino | 2012年4月16日 (月) 00時20分

いまルーマニアのクラヨバでミハイ・エミネスク詩祭にきています。イタリア詩人も何人かおられ、ダンテ・マッフィアも知り合いになりました。日本へ来てくれるという話もあります。いつか実現できたらいいのですが。

投稿: パピヨン | 2015年9月18日 (金) 13時12分

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