Montale: 《Mottetti XIV》
モッテッティ XIV
吹き荒れるのは、塩か雹(ひょう)か? ホタルブクロを
虐殺し、香水木(レモンヴァーベナ)を根こぎにする。
水中の鐘の音ー君がそれを目覚めさせたのだがー
が、近づき、そして遠ざかる。
冥界のピアノラ(自動ピアノ)は、みずから
音域を加速させ、氷の領域に
登っていく...ー君が
「鐘のアリア」で、軽やかなトリルを用い
ラクメを演じるときのように輝く。
(訳者妄言)
エウジェニオ・モンターレのモッテッティ連作のXIV。音楽からの引用が多い。3行目の水中の鐘の音は、ドビュッシーのピアノ曲《前奏曲集I》のなかの「沈める寺」(Cathe'drale engloutie) . 自由ピアノにはさまざまな商品名がありピアノラはその一つである。ロール・ペイパーを用いて、演奏者なしで、ピアノから音がでるしくみ。ラクメは、ドリーブのオペラ『ラクメ』の女主人公で、「鐘のアリア」は彼女によって歌われるソプラノのアリア。この役は、とりわけ高音が多く、コロラトゥーラ・ソプラノの軽い声が適している。たとえばレコードでは、マド・ロバンがデッカに録音した《ラクメ》の全曲盤でその高音を軽やかに転がる声おを堪能することができる。
「沈める寺」は、ケルト伝説を踏まえている。それによるとイスの町は、富と快楽の町として栄えていたが、神の使者によって、水門を開かれ、水没してしまう。そこで、沈んだ教会、大聖堂が生じるわけだが、そこでは今でもミサが行われており、地上の人間が交誦すると町が一瞬浮かび上がり、また沈んでしまう、と言われている。(この伝説には細部の異なるさまざまなヴァージョンがあるようだ)。
オペラ《ラクメ》の主人公ラクメは、インドのバラモン僧の娘なのだが、辻歌いの娘に身をやつし、父の命じるままに歌を歌う。これがアリア「鐘の歌」であり、内容的にはパリア(賤民)の娘の物語歌である。
この詩に登場する音楽は、引用であり、かつ、この世ならぬ異界の音である。沈める寺の鐘の音、冥界のピアノラは明らかに、現実ばなれした音だが、《鐘のアリア》のラクメも、声域があまりに高い点で普通でないのと、オペラの登場人物としてのラクメは、イギリス統治下のインドの娘ということで、エキゾチックな存在である。
こうした現実と非現実が交差し、スパークするところに、クリツィアは瞬間的に立ち現れ、また消えていってしまうのだろう。
原文は、
Infuria sale o grandine? Fa strage
di campanule, svelle la cedrina.
Un rintocco subacqueo s'avvicina,
quale tu lo destavi, e s'allontana.
La pianola degl'inferi da se'
accelera i registri, sale nelle
sfere del gelo...-brilla come te
quando fingevi col tuo trillo d'aria
Lakme' nell'Aria delle Campanelle.
音としては2,3行目のcedrina , avvicina が押韻。5,7行目の se', te が韻を踏み、6,9行目のnelle, Campanelle も韻を踏む。8行目、9行目のaria は、前者がコロラトゥーラ・ソプラノの軽やかな声を形容する言葉なのに対し、後者はオペラのなかのアリアという意味である。
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