モンターレ:クセーニャII 6
6
酒場の主人はお前に少し地獄を
ついだ。お前は、挫けて、「飲まなきゃいけないの?
とろ火で中で焼かれただけじゃ不十分なの?」
(訳者妄言)
ユーモラスな詩である。
地獄というワインを飲まされたが、私(モスカ)は地獄で焼かれたことがあるのに、それじゃ不十分で、飲まなくてはいけないのか、という反応。
原文は次の通り。
Il vinattiere ti versava un poco
d'Inferno. E tu, atterita: 《Devo berlo? Non basta
esserci stati dentro a lento fuoco?》.
1行目末のpoco と3行目の fuoco が韻を踏んでいる。
地獄を飲むというのは、ぎくっとする表現だが、これは草稿をL'Opera in versi (Bettarini, Contini 編、Einaudi, 1980)を見るとより良く判る。
もともとは、
Il vinattiere suggeriva un vecchio
Valtellina, l'Inferno. E tu: 《Anche berlo?
Neppure l'ho voluto quando c'ero
dontro, fin quasi al mento》.
酒場の主人が、古い
ヴァルテッリーナ、インフェルノをすすめた。お前は、「飲むの?
地獄の中に、顎(あご)まで浸ってた時だって
飲みたいとは思わなかったのに」。
となっていた。Valtellina というのは北部ロンバルディアのワインで、その中に Valtellina Inferno とか Valtellina superiore Inferno と呼ばれる種類がある。草稿段階では、それを明らかにしていたが、仕上げでは、いきなり Inferno (地獄)とくるので、訳文もそのようにした。
おそらくは、酒場の主人と、モスカのやりとりが、こういう冗談をとりまぜて実際にあったのだろう。それをどう仕上げるかは詩人の腕次第である。
草稿では、行末が vecchio, berlo, c'ero, mento となっており、berlo と c'ero が不完全な韻で、4行すべてが o で終わっているだけでなく、e o がすべて含まれている。
これらが書かれたのは、1967年だが、古典的な韻ではないにせよ、音韻への配慮はベテラン詩人、ぬかりない。
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