モンターレ:クセーニャII 10
10
捜しまわったはてに、
お前はリベルダーデ通りのアヴェニダホテルの
バールにいた。お前は、ポルトガル語の h も
知らず、というより知っているのは一つだけ
マデイラ。グラス一杯の白ワインが
伊勢エビのつけあわせとともに出てきた。
その晩、私は発音できない名のひとたちから
ポルトガル最大の詩人にたとえられた
さらにはカルドゥッチにまでたとえられた。
まったく感銘をうけず、お前は涙がでるまで
聴衆に隠れて笑っていた
おそらくは退屈し、懊悩して。
(訳者妄言)
ポルトガルでの出来事である。リスボンにリベルダデ通りがあり、そこにアヴェニダという名のホテルがある。
後半、第二連からすると、モンターレは講演をしたか、モンターレがからんだシンポジウムがあって、そこでモンターレはポルトガルの詩人(複数)やカルドゥッチにたとえられたのであろう。そこに聴衆としていたモスカは、感銘を受けるどころか、笑い転げ、おそらくは退屈し、しかしながら場所柄、神妙な顔つきでいた、気がつくと、さっさと帰ってしまった。第一連に戻って、どこにいるかと捜したら、ホテル・アヴェニダにいた、というところだろうか。
後半の原文は
La sera fui paragonato ai massimi
lusitani dai nomi impronunciabili
e al Carducci in aggiunta.
Per nulla impressionata io ti vedevo piangere
dal ridere nascosta in una folla
forse annoiata ma compunta.
拙訳では、annoiata ma compunta を tu にかけているが、直前のfolla にかけて解釈することも出来る。その場合、モスカではなくて、聴衆が退屈して、懊悩しているということになる。
第二連は、1行目末のmassimi と2行目末 impronunciabili が assonanza (母音韻)で、3行目末のaggiunta と6行目末のcompunta が韻を踏んでいる。
前半の原文は、
Dopo lunghe ricerche
ti trovai in un bar dell’Avenida
da Liberdade; non sapevi un’acca
di portoghese o meglio una parola
sola: Madeira. E venne il bicchierino
con un contorno di aragostine.
で、第一連4行末の parola と第二連4行末のfolla はほぼ韻をなす。5行目末のbicchierino と6行目末のaragostine は consonanza (子音韻)をなしている。また行末ではないが、6行目のcontorno も r n o を bicchierino と共有している。第一連は、特に後半 o の音が支配的である。4行目末 parola (アクセントがo の上)、5行目冒頭の sola, 6行目冒頭 con, 中程 contorno, 最後はアクセントはのらないが aragostino である。
それに第二連後半は o を響かせつつ、a が支配的となる。おしまいの二行(第二連5行目、6行目)は
dal ridere nascosta in una folla
forse annoiata ma compunta.
であるが、5行目は、dal, nascosta(アクセントはo の上), folla (アクセントは o の上)
6行目は、annoiata (アクセントは a の上)、ma, compunta (アクセントはu の上)となっている。
o と a の交錯もこの詩を味わう楽しみの一つかもしれない。
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