モンターレ:クセーニャII 1
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死はお前に関係なかった。
お前の犬たちも死んだし、
痴呆の叔父さんというあだ名の精神科医も死んだ、
お前の母親やその米やカエルの
「得意料理」、ミラノの大勝利も、
小さな肖像となって、夜となく朝となく
壁から私を監視しているお前の父親も。
にもかかわらず、死はお前に関係ない。
葬式には、私も行かねばならなかった、
タクシーに隠れて、遠く離れた場所にいて
涙や煩わしさを避けた。それでも
お前には、人生や、その虚栄の
馬鹿騒ぎや貪欲、ましてや
人間を狼に変える世界に広がる腐敗は、
重要でなかった。
白紙、ある一つの点にすぎないのか、
私には判らないが、
この点は、「お前に関わっていた」。
(訳者妄言)
モンターレのクセーニャにはI とIIの二つの連作があり、それぞれ14編の詩からなる。これは II の最初の詩。
おしまいの3行は、原文では Una tabula rasa; se non fosse/che un punto c'era, per me incomprensibile,/e questo punto ti riguardava. で、ti riguardava の部分はイタリックで強調されている。死にもかかわらず、生の喜び、虚栄にも背をむけていたモスカ。
モスカは、モンターレが長年連れ添った伴侶、もともとは美術評論家マッテオ・マランゴーニの妻であった。近視で分厚いレンズの眼鏡をかけ、モンターレの友人からモスカ(蠅)とあだ名で呼ばれていた。本名はドゥルシッラ・タンツィ。1963年10月20日、死亡。二人は1930年代から同居していたが、1963年に結婚した。
そのモスカが一点こだわっていた白紙(状態)とはなんであるのか。まっさらな状態に対するこだわり。
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