チロル州立博物館(その4)オランダ風景画の勃興
オランダ風景画の勃興
16世紀に勃興した風景画は、単に宗教画の背景ではなかった。オランダの風景画は17世紀になると独立した、非常に人気のあるジャンルへと発展する。ただし、絵画ジャンルのヒエラルキーの中では末席にいたことは間違いないのだが。
この時代、遠国の珍しい風景ではなく、国内の風景が描くに値するモティーフと捉えられるようになったことが新しい。
静物画と同様に、そこには象徴的な意味があり、堤防を建設する技術を誇るのと同様のプライドが反映されているのである。それゆえ、風景は必ずしもあるがままに描かれるとは限らず、理想化されて描かれることもあった。
一方、イタリアを描いた風景画は、国内の風景画よりも高く売れた。しかも画家たちは必ずしもイタリアに実際に行って描いたのではなく、牧歌的情景にたっぷり南方の光をいれて理想化された光景を描いた。
風景画のサブジャンルとしては、Aert van der Neer のように夜の情景を専門とするものや、Egbert van der Poel やFrans van Oosten のように火の燃えさかる情景を専門とするものもいた。
次項に続く。
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