アレッサンドロ・スカルラッティ没後300年記念ー演奏会と講演会 その4
おまけ:舞台裏を少し——通奏低音が「オールスター」だった件
私は幸運な事情にめぐまれて、本公演に先立つリハーサルを3日間見学することができたのだが、そこで面白かったのは、解釈が「指揮者の指示」で決まるだけではなく、アンサンブル内部で練り上げられていく現場だったこと。福島康晴が明確にリーダーシップを取りつつ、奏者からも意見や質問が出る。解釈が合意として立ち上がる速度が速い。
そして何より、通奏低音陣が豪華。チェロ、ヴィオローネ(コントラバス)に加え、オルガン、テオルボ、ハープ、チェンバロが揃う。ここから「今日は誰が出る?」を曲ごとに決めていく。
通奏低音は“音量の調整”ではなく、場面の性格づけ=味付けだと、あらためて実感した。スカルラッティが劇の人である以上、低音の選択はドラマの選択でもある。
まとめ:没後300年を「顕彰」で終わらせず、「現在形」にした二夜
この二日間が良かったのは、没後300年を「過去の偉人を讃える会」にせず、研究・教育・実演が行き来する“現在形”の企画にした点だと思う。オンライン講演で輪郭をつくり、当日のナレーションと字幕で抜粋上演の弱点を潰し、ピリオド楽器とバロック歌唱、そして譜面への細やかな配慮で作品を“生きた劇”として現前させる。
二日目が完売したという事実も含めて、スカルラッティは「ドメニコの父」では終わらない——ということが、説得力ある音楽体験として示された。
次は、記念年が終わってからが本番だ。上演が続くかどうか。私は続いてほしいと思う。これだけ面白く音楽が充実しているのだから。
クレジット
主催:日本イタリア古楽協会
助成:日本音楽学会「音楽関係学術イベント開催助成金」、野村財団、東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
後援:イタリア文化会館
(曲目・出演者の詳細は、パンフレット/当日資料に準拠)
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