ヘンデル《ロデリンダ》
今となっては大分時間が経過してしまったが、ヘンデルのオペラ《ロデリンダ》を観た(北とぴあ、2025年11月30日)。
指揮とヴァイオリンは寺神戸亮、管弦楽はピリオド楽器によるレ・ボレアード。演出は小野寺修二。舞台に二人のダンサー(崎山莉奈、大西彩瑛)が加わり、登場人物の感情の輪郭を、歌手とは別の身体で可視化していく——この方法が、思いのほか作品の「演劇性」をくっきり立ち上げていた。
歌の面では、ロデリンダ役ロベルタ・マメリがとりわけ印象的で、旋律線のしなやかさ、言葉の切れ、情念の濃度が、どれも高い水準で揃っていた。もちろん、他の歌手も総じて充実している。とくにウヌルフォ役の中嶋俊晴、エドゥイジェ役の輿石まりあは、声だけで人物像を生き生きと立ち上げ、場面ごとの空気を変えていく力がある。音符を「きれいに」並べる以上に、ドラマとしての呼吸が伝わってくる歌唱で、ヘンデルが劇であることを改めて実感させた。
寺神戸のレ・ボレアードも、ヘンデルがすっかり板についてきた感がある。音楽が過度に装飾に傾くことも、逆に禁欲に寄りすぎることもなく、劇の推進力として機能していたのが頼もしい。通奏低音も生き生きとしていた。ダンサーが感情を代行することで、歌手が歌と身体表現の両方を同時に背負い込みすぎず、“歌に専念できる安心感”が生まれるのも、この演出の美点だろう(もちろん、歌と踊りを超人的に両立する歌手の魅力を否定するものではない)。
総じて満足度の高い上演だった。ヘンデルのオペラが、本来の意味で「舞台芸術」として聴こえ、見えた夜である。
公演データ
ヘンデル《ロデリンダ》/北とぴあ〔 〕
指揮・ヴァイオリン:寺神戸亮
演出:小野寺修二
ロデリンダ:ロベルタ・マメリ/ベルタリード:クリント・ファン・デア・リンデ/グリモアルド:ニコラス・スコット/エドゥイジェ:輿石まりあ/ウヌルフォ:中嶋俊晴/ガリバルド:大山大輔
ダンサー:崎山莉奈、大西彩瑛
管弦楽:レ・ボレアード(ピリオド楽器)
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