コンサート《Combattimento》
《Combattimento》と題するコンサートを聴いた(インスブルック、アンブラス城スペインの間)。
モンテヴェルディの作品「Combattimento di Tancredi e Clorinda」を中心としたプログラムである。演奏は、Michele Pasotti と La fonte musica. マドリガルのような声楽曲をも演奏する団体なので、ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオローネ、チェンバロ、テオルボの奏者の他にソプラノ、アルト、バリトン、バスの歌手がいる。
一時間前に開催されるレクチャーに参加したのだが、Michele Pasotti (リーダー)と Mauro Borgioni (バリトンで、Combattimento のナレーター役で大活躍)とソプラノの Alena Dantchevaが英語で語った。この日のコンサートは、'Combattimento di Tancredi e Clorinda' が初演の時、つまりヴェネツィアのモチェニーゴ家の館で上演された時のコンサートを再現することを目指している。'Combattimento di Tancredi e Clorinda' のテクストはトルクヮート・タッソの長編叙事詩『解放されたエルサレム』第12巻52-62,64−68編から取られている。周知のように、タッソの『解放されたエルサレム』はその中のエピソードがもとになって多くのバロック・オペラが書かれている。タンクレディはキリスト教徒の騎士で、クロリンダはイスラム教徒の女性。敵同士なのだが恋におち、この曲では、戦場で相手が誰とは知らず、激闘することになる。
モンテヴェルディ自身が書いているのだが、'Combattimento' の前にマドリガルが演奏された(詳細な曲目は不明)とのことなので、それをパゾッティが想像してこのようなものであったろうというプログラムで再構成しているのである。
その際には、モンテヴェルディとマントヴァやヴェネツィアで同時代の作曲家だったサラモーネ・ロッシ(1570−1630)やダリオ・カステッロ(1602−1631)の作品が選ばれている。
前半は
サラモーネ・ロッシの Sinfonia grave a 5
モンテヴェルディの
'Sfogava con le stelle' SV78
'Crud' Amarilli' SV94
'Anima mia, perdona' SV 80a
'Che se tu se' il cor mio' SV 80b
オルフェオから Sinfonia
'Ohimè il bel viso' SV 112
Sinfonia a doi violini e una viola da brazzo
'Zefiro torna' SV108
サラモーネ・ロッシの Sonata prima, detta Moderna
モンテヴェルディの
'Hor che 'l ciel e la terra e 'l vento tace' SV147
ここで休憩
後半は
ダリオ・カステッロの
Sonata XV a 4 これはなかなかスタイリッシュな曲だった。」
最後がモンテヴェルディの 'Il Combattimento di Tancredi e Clorinda' SV153
タンクレディ役とクロリンダ役は、部屋の端から登場し、わずかな身振りで演技らしきものもする(舞台衣装は身につけていない)。しかし圧倒的に分量が多いのは語り手である。語り手(バリトン)のマウロ・ボルジョーニは大喝采を得ていた。また、この作品では戦いというものを音楽で描写的に描きだしたことが革新的で Stile concitato (興奮した様式)を用いたとモンテヴェルディ自身が述べている。これは16分音符で弦が細かく刻むことによって緊張を表象しているのである。
戦いの場面をナレーションするということで、語り手というとレチタティーヴォ的なものであるわけだが、通常のオペラのレチタティーヴォよりはるかに分量が多く、出ずっぱりになるし、音楽的な起伏、伴奏のオーケストラも明らかに劇的な表情、振幅の大きな表現を意図しているのであり、それを見事に実現した上演で、モンテヴェルディのオペラとは異なった醍醐味があった。語り手のところは必ずしもモノディーではなく、後のロッシーニのバッソ・ブッフォのように、一音節に沢山の言葉が詰め込まれた早口の部分もあった。つまり語りの表情が激変するのである。語り手のマウロ・ボルジョーニは、'Compattimento'がモンテヴェルディの最高傑作だと断言していた。この日の演目であり、彼が最重要な役を演ずるということを考慮にいれねばならないが、彼がそう確信していることに納得のいく、大熱演で、その熱は聴衆に伝わった一夜であった。
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