ヴィヴァルディ《ジュスティーノ》その3
ヴィヴァルディのオペラ《ジュスティーノ》を再び観た(インスブルック、音楽館)。
このオペラは、1724年1月23日にローマのテアトロ・カプラニカで初演された。カーニバル・シーズンの上演である。先日のコンサートのヘンデルの9つのドイツ・アリアの作曲とほぼ同時代である。また、この当時、ローマでサルテリオという金属の撥弦楽器(チターに似ていなくもない音色)がはやっていて、第三幕でジュスティーノのアリアに出て独特の効果をあげている。この時代、ローマでは女性歌手が舞台にあがるのは禁止されていたので、全員男性が歌った。つまり、アリアンナやレオカスタはカストラートが女装して歌ったのだ。これはヴィンチの《アルタセルセ》なども同様である。
リブレット(台本)は、アントニオ・マリア・ルッキーニによるものだが、彼のオリジナルではない。1683年にニコロ・ベレガンという人のリブレットにレグレンツィが作曲したのが最初だった。1711年にアルビノーニが同題材をオペラ化する時には、パリアーティが手を加え、1724年にヴィヴァルディがオペラ化するときにはさらにルッキーニが手をいれたわけだ。
ちなみに、他の作曲家の《ジュスティーノ》を見ると、1703年ドメニコ・スカルラッティ(ナポリ)、トンマーゾ・アルビノーニ(ボローニャ、1711)、Johann Christian Schiefferdecker のジングシュピール(ライプツィヒ、1700,ハンブルク、1706)。ヘンデルは1737年にこの題材を取り上げている。というわけで、この素材はかなり広く、様々な作曲家、様々な地域で取り上げられていたのだ。
このリブレットの特徴は、プロローグにではなくて、本編の話の中にフォルトゥーナという運命の女神が登場することである。第一幕5場で、フォルトゥーナが出てきて、眠っているジュスティーノを起こす。これは象徴的行為で、ここからジュスティーノが田舎の農夫である状態から、さまざまな事件を経て、宮廷に入り、騎士に叙せられ、ついには皇帝の共同統治者となる。ジュスティーノがアルトであるのも興味深い、皇帝であるアナスタジオの方はカウンターテナーで高い声なのだ。これは身分が高い方が高い声というバロック期の原則にそったものであると同時に、ジュスティーノが権力欲にはやる人物ではないことも示しているだろう。
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