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2024年9月11日 (水)

ヴィヴァルディ《オルランド・フリオーソ》その2(あらすじ)

《オルランド・フリオーソ》は前項で記したように登場人物が多い。

アリオストの原作が大長編の騎士物語(詩の形で書かれている)なので、リブレット作者がどのエピソードを取って、あとは全部捨てるという思い切りが必要となる。ヴィヴァルディの《オルランド・フリオーソ》は、ヘンデルの《アルチーナ》などとは異なり、アリオストの原作の主人公オルランドが登場し、彼の狂気が扱われるので、それがなぜ生じたか、どう解決したかが描かれているので、ストーリの複雑さが増している。

簡単にあらすじを紹介しよう。筆者の場合、フルストーリを細かく最初から説明されるとストーリが逆に頭に入らず、簡易版で幹の部分がわかって後から枝葉を付け加える方が理解しやすい。読者によって、最初からフルストーリが頭に入る方もいらっしゃるとは思うがここは簡易版で。

第一幕

メドーロという若者が難破を逃れてある島にやってくる。メドーロはアンジェリカの恋人なのでアンジェリカは喜ぶが、アンジェリカに恋しているオルランドが嫉妬をあらわにするので、アンジェリカはメドーロは兄弟だと嘘を言う。

魔女アルチーナは、騎士ルッジェーロを気に入り、魔術を使って彼の妻ブラダマンテを忘れさせ、アルチーナを愛するようにさせる。男装してやってきたブラダマンテはルッジェーロの「心変わり」を知る。ルッジェーロは妻を認識できない。

第二幕

森の中。アストルフォはアルチーナを愛しているのに、アルチーナはつれないと嘆く。アルチーナは一人の恋人では満足できないし、それをアストルフォは受け入れるべきだと言う。

ブラダマンテはルッジェーロに指輪を見せると、アルチーナによる愛の呪縛がとけ、ブラダマンテが誰かがわかり、今までの自分の行為を悔いる。ブラダマンテはすぐにはゆるさない。

アンジェリカは、オルランドを追い払うために洞窟に行ってある薬を取ってきてくれと言う。オルランドはそこで魔術にかかる。

アルチーナはメドーロとアンジェリカの結婚を取り計らう。二人は愛を誓う言葉をあちこちの木に刻む。苦労して洞窟から逃れでたオルランドはこの木に刻まれた言葉を読み、アンジェリカに騙されたことを悟る。怒りのあまり彼は正気を失う。鎧兜を脱ぎ捨て、彼は木を抜き始める。

第三幕

ルッジェーロ、ブラダマンテ、アストルフォは、オルランドが死んだものと思っている。彼らはヘカテの神殿の前で、復讐を誓う。神殿の中のメルリンの灰を奪ってアルチーナの魔力を奪おうとするのだ。彼らの会話を盗み聞いていたアルチーナは激怒する。アルチーナは魔力を増そうと思い神殿に入るが、そのすきに三人も入る。アルチーナは男装したブラマンテ(アルダリコ)に惚れている。そこへオルランドが現れるが正気を失ったままで、暴れまくり、結果的にメルリンの像を倒して、アルチーナの魔力を奪う(この場面は演出のため具象的に描かれてはいなかった)。

島は一瞬で荒野へと変わり、アルチーナを取り囲んでいた豪華な建物は全て消え失せる。

オルランドは眠りに落ちる。

アルチーナは醜い姿に変わっているが(今回の演出では特になし)、復讐のためオルランドを殺そうとする。ブラダマンテとルッジェーロが彼を守る。

目が覚めるとオルランドは正気に戻り、アンジェリカへの恋心も解消している。アルチーナは彼らを呪い、去っていく。アンジェリカは騙したことを悔いるが、オルランドは許し、アンジェリカとメドーロを祝福してめでたしめでたし。

原作を読むと、奇想天外なところがいっぱいあって、オルランドがアンジェリカを怪物から救う(西洋絵画にはオルランドやその他の登場人物を絵画化したものが多くある)のだが、アンジェリカはお礼を言うまもなく、他の男のところへ行ってしまうし、オルランドの狂気は、モノとして存在し、そのありかは月なのである。まあ、この辺りは、ヴィヴァルディでは出てこないのであるが。

アリオストの『オルランド・フリオーソ』はイタリアでは、日本で言えば『平家物語』くらい有名で、平家と異なり作者は一人であるが、それを元にいくつものオペラや絵画作品が作られたのである。つまりかつてはヨーロッパ中でよく知られた物語であった。

近代の演奏ではクラウディオ・シモーネが1978年に蘇演したわけで、その功績は実に大きいと思うが、彼はかなりカットや順序の入れ替えをしているので注意が必要である。CDやDVDを聴き比べ、見比べるとすぐに気づく。今から見れば、楽器や奏法が古楽でないことが気になる面もあるものの、マリリン・ホーン、ヴァレンティーナ・テッラーニ、ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの歌唱は素晴らしい。テンポはやや遅め。

 

 

 

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