ロッシーニ《とんでもない誤解》
ロッシーニのオペラ《とんでもない誤解》を観た(ペーザロ、ロッシーニ劇場)。
ロッシーニの第二作で、1811年にボローニャのコルソ劇場で初演だから彼はまだ19歳の若者だった。しかし音楽は全編、ロッシーニらしさに満ちている。ストーリが痛快と言えば痛快で、成り上がりの富農ガンべロット(ニコラ・アライモ)の娘エルネスティーナ(マリア・バラコヴァ)をめぐる三角関係。彼女には親の決めたいいなずけブラリッキ—ノ(Carles Pachon) がいるが、貧乏青年エルマンノ(ピエトロ・アダイーニ)も彼女に心を寄せている。召使いたちは、エルマンノに味方していて、フロンティーノ(マッテオ・マッキオー二)が一計を案じ、秘密の手紙がブラリッキーノの手に入るように画策する。その手紙には、エルネスティーナは実は子どものときにカストラート歌手になるべく去勢された男である。その後、歌手にはならなかったのだが、女のフリをして兵役を逃れている、という内容で、ブラリッキーノはその内容をすっかり信じ、ショックを受け、エルネスティーナを避けるようになる。手紙が読まれるところは会場で何度も笑いがはじけた。ブラリッキーノは兵役逃れを告発したので、エルネスティーナはいきなり逮捕されてしまう。エルマンノの助けで脱獄。すべての誤解は、フロンティーノのにせ手紙からと判りめでたしめでたし。
初演は好評だったのだが、セクシュアルな冗談や状況設定に問題ありということで、三回で上演禁止となり、イタリア全体でも演奏が禁止され、蘇演されたのは、1965年シエナのアカデミア・キジャーナでのことだった。
現代でのほうが、この台本を楽しむ土台ができているのではないだろうか。
指揮はミケーレ・スポッティ。自分のやりたい音楽を明快にオケに伝える若々しい指揮ぶり。歌手のなかではアライモが貫禄も歌も飛び抜けていた。演出も、台本の面白さを活かした穏当なものだった。
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