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2024年7月12日 (金)

ヘンデル《デイダミーア》

ヘンデルのオペラ《デイダミーア》を観た(目黒・パーシモンホール)。

パーシモンホールは最寄り駅が都立大駅で、もともと都立大があった跡地に建てられたホールである。

6年前にもここでヘンデルの《アルチーナ》を観た。2021年はイタリアに行く準備に追われてか行かなかった。

《デイダミーア》は、リブレットがパオロ・ロッリが書いたのだが、内容的にはリブレットをメタスタージオが書いた《シーロのアキッレ》と同じ部分が多い。つまり、同じギリシア神話を扱っている。アキッレ(アキレス、アキレウス)の母テティス(ニンフとも海の神ともされる)が、息子アキッレはトロイ戦争に行くと死んでしまうことを予知し、それを避けるため、アキッレを女装させてスキュロス島の王にあずける。アキッレは王の娘デイダミーアと仲睦まじくなる。そこへウリッセがやってきてアキッレがいるのではないかと探しだそうとする。デイダミーアの抵抗むなしく、アキッレは自分の戦士としての使命に目覚めてしまう、という物語だ。

 パオロ・ロッリもメタスタージオもジョヴァンニ・ヴィンチェンツォ・グラヴィーナの弟子、つまり二人は同門なのだ。先生のグラヴィーナは、この時代のイタリアの文学に多大な影響を与えたアッカデーミア・デッラルカディア(アルカディア会)の創設者の一人。モンテヴェルディの頃、17世紀のリブレットがコミカルな要素とシリアス(セリア)な要素が入り交じっていたのを、オペラ・セリアにおいてはシリアスな要素のみにすっきりさせるという方向に、彼らの運動は進んでいった。フランスのラシーヌらの古典主義に影響を受けたものである。

 ここで両者を比較してみると面白いかもしれない(《シーロのアキッレ》についてはごく最近『バロックオペラとギリシア神話』(論創社)で一章まるまる割いて論じているのでご覧あれ)。

演奏は、若手にとって貴重な機会となっているようで、レチタティーボもかなり練り上げられていたが、さらに向上する余地はあると思う。バロック歌唱は、それを専門とする人が日本の中からもっと出てきても良いのにと思う。原曲からはかなり曲が間引かれていて、演奏時間が3時間ぐらいかかるところが2時間くらいになっていた。バロックオペラははじめてという人にはこれくらいの長さの方が見やすい、聞きやすいかもしれないとも考えた。この企画は是非続けて欲しいし、さらに言えば、頻度があがるとなお一層よいと思う。

 

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