ジネヴラ・エルカン監督『そう言ったでしょ』
ジネヴラ・エルカン監督の映画『そう言ったでしょ』を観た(イタリア映画祭、オンライン上映)。
地球温暖化が進行したローマ。冬なのに30度を超える気温で、画面には黄色がかったもやがずっとかかっており、映画の最終場面ではそのもやはますます濃くなって登場人物は自分がどちらに進んでいるかもわからなくなってしまう。彼ら・彼女らは、最終場面ではあまりの暑さにそこから逃れようと湖に向かっているのだが、もやが深くてそこにたどりつけるかはわからない。まことに寓意的な話である。湖は何らかの救済のシンボルであろう。アレゴリカルな映画だ。
登場人物は何組かいるのだが、みな解決困難な問題を抱えている。ある中年女性(テデスキ)、旧友のポルノスター(ゴリーノ)との間に夫を奪われた確執があってそれがオブセッションになっている。そのオブセッションから妙に信仰にこだわりが強い。その娘は、あきらかに過食症をわずらっているが、母のふるまいに困惑している。また別の女性(ロロヴァケル)はアル中で、子どもと別離を余儀なくされているのだが、無理矢理接近していく。さらに元薬中の神父(なぜかアメリカ出身でイタリアに住んでいる)のところに妹が母親の遺骨を携えやってくる。二人は遺骨をカトリックの教会に埋葬するか、非カトリックの教会に埋葬するかでもめる。
どれも安易な解決方法はなく、ある種の疲労感が漂うのだが、それは異常気象の暑さと妙にマッチしているともいえる。ネガティブな話のなかに不思議な魅力(豪華キャストの達者な演戯もそれに寄与しているだろう)のある映画だった。
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