チロル博物館 その2 風景画や静物画の誕生について
この博物館の一角には、オランダの画家たちの風景画や静物画が展示してある。この博物館のところどころに付された絵画史に関するコメントは、個別の画家の情報とは別に、時代を俯瞰し、巨視的にヨーロッパ的視野からどういう事態、事件、政治・経済情勢が発生していて、文化(絵画)がこういう変化を遂げたという解説が各コーナーにあり、決して長い文章ではないが近年の研究も反映されているようで嬉しい。
いくつかを紹介する(大意を取ったものできちんとした翻訳ではないことをお断りしておく)。
歴史画が、絵画のジャンルのヒエラルキーの中でトップに登りつめたーそれは17世紀オランダに限らない。歴史画といった場合、絵画のモティーフを旧約・新約聖書、ギリシア・ローマ神話、聖人伝、詩や歴史書から取っている。このジャンルの卓越性は、上記のところから取ってきた人物を上手く配置することによって物語が語られるように(観る者が読み解けるように)描くことである。
歴史画の一つの起源は祭壇画にあって、そこでは聖書の出来事を語る(例えば東方の三賢者の礼拝)のだった。
ところが、オランダの北方でカルヴァン派が確立すると、礼拝所で図像(絵画・彫刻)が禁止され、歴史画の需要が無くなってしまった。こういった絵画は、教会からは注文もされず、購入もされず、新たに富裕になった都市商業階級によって購入されるようになった。Barent Fabritius やレンブラント周囲の画家たち、Cornellis de Baellieur らはこういった新しい階層が顧客となったのである。
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