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2023年8月14日 (月)

フランチェスカ・アスプロモンテのリサイタル

フランチェスカ・アスプロモンテのリサイタル《プリマドンナ》を聴いた(アンブラス城、インスブルック)。

アンブラス城は、郊外の丘の上のお城なのでシャトルバスが出る。

日本では、歌手の名前にリサイタルとつける場合が多いが、ヨーロッパではリサイタル自体に何らかのタイトルがついている場合が多いと思う。一夜のプログラムをあたかも一冊の本のように構成して目次(どういう曲を演奏するか)を構成し、本のタイトルをつけるように、リサイタル全体のタイトルをつけるのである。だから、プログラムはどういう意図があるのか、音楽史的な見取りなのか、意外な補助線を引くことによって普段見過ごされがちな作曲家、時代の一面が見えてくるというプログラムなのか。プログラムを読み解く楽しみもあるというものだ。

この《プリマドンナ》というタイトルはフランチェスカ・クッツォーニを指しているのだと思われる。この日歌われたのは、ピエル・ジュゼッペ・サンドーニとベネデット・マルチェッロであるが、サンドーニの生涯をたどっていくとクッツォーニとの接点が見えてくる。

サンドーニは1685年(1683年説もあり)にボローニャで生まれた。オルガン弾きとして作曲家として頭角をあらわしたが1716年にロンドンに渡り、ヘンデルの指揮のもとでオーケストラ団員となる。そこで有名な歌手フランチェスカ・クッツォーニと知り合い、結婚する。ロンドンの後はミュンヘンやウィーンで過ごし再びイタリアに戻る。その後、再びロンドンに渡って今度は貴族オペラの方に加わる(ポルポラが率いていた)。晩年はボローニャに戻りアカデミアの運営に関わった。

この日のプログラムは、ベネデット・マルチェッロのシンフォニアとサンドーニの歌曲および器楽曲が交互に置かれていた。前半はオケのラ・フロリディアーナもアスプロモンテも安全運転で、端正な歌いぶり、演奏ぶりだった。休憩をはさんで後半にはいって少し大胆に表情をつけたりテンポを動かしたりするようになった。

マルチェッロのシンフォニアは主題に洒落たものもあるのだが、意外な展開や意表をつく表現には乏しいと感じた。サンドーニのカンタータや器楽曲も、破綻はないのだが、創意工夫に富んだというよりは、オーソドックスなものであった。

後半の演奏中に何度か雷の音がしたが、シャトルバスに乗るまでに皆びしょ濡れになった。

 

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