チロル州立博物館
この博物館は、フェルディナンド大公によって設立されたため Ferdinandium と呼ばれることもあるオーストリア・ハンガリー帝国で三番目に古い由緒ある博物館で考古学的なものから現代美術にいたるまで幅広い収蔵品を収めている。
が、筆者は特殊な関心のもとに、数多くある収蔵品の一部に強い興味がある。
1.以前にも書いたことがあるが、ここにはモンテヴェルディの肖像画(とされているもの、専門書においてもしばしば彼の肖像画として掲載されている)がある。すんなり、彼の肖像画といえないところに、当時の音楽家の地位が決して高くはなかったことが反映されているとも言えよう。
2.古楽器(と言っても16世紀や17世紀の人にとっては現代の楽器なわけであるが)や古楽器の描かれた絵画の収蔵・展示があること。この博物館は来年から3年をかけて大きな修復をするとのことで、展示を大幅に変更しており、残念ながら観ることが出来なかった。最近のヨーロッパの博物館は、大幅な修復をすると展示方法、解説方法がデジタル化、ヴィデオの利用が進み判りやすくなるので、修復後の展示にぜひ再会したくはある。
3.今回観て面白かった絵の一つに、子ども3人が描かれている絵があった。なんだかおかしな雰囲気なのだが理由がある。貴族の子どもが、羊飼いの格好をしているのである。1645年頃描かれた絵で、当時の文学やオペラのリブレットでも羊飼いの格好をしているが、実はどこかの王子、王女と言った話はよくあるのだ。16世紀には牧歌劇などもはやっている。これを描いたのはオランダのAelbert Cuyp であるが、こういう主題がこの時代に描かれていることに興味を惹かれた。子どもたちの服の細部を見ると、服は決して質素ではなく、細かな刺繍がほどこされていたり生地自体もむしろ贅沢なもののようだ。つまり3人の牧童は、観念的な牧童であって、リアルな牧童ではないのだ。17,18世紀のオペラやカンタータ、演劇に出てくる羊飼いもそうで大抵は宮廷人の仮の姿といったところ、なにか事情があって故郷を離れ、身をやつしている、という場合もある。
まだ書くべきことはあるのだが、次項にまわす。
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