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2023年3月 1日 (水)

ヘンデル作曲《ヘラクレス》の演奏評

前項の続き。

指揮はラース・ウルリク・モルテンセン。コペンハーゲンでコンチェルト・コペンハーゲンを率いバッハの録音などでおなじみかもしれない。

オーケストラは、いつものドイツ・ヘンデル・ゾリステンで、ヴェテラン揃い。このオーケストラは音楽学者や音楽学校・音楽大学の先生などが集まって出来ている。カールスルーエの州立劇場の通常のシーズンのオケとは全く別なオケである。そういうシステムを採用しているのはドイツではカールスルーエのみとのこと。

モルテンセンの指揮は、一つ一つのアリアの中でここといった特徴を際立たせることはまれで、一つのアリアは比較的平坦に進む。旋律を担当するヴァイオリンやオーボエには指示が出るが、チェロやコントラバスにはほとんど出ない。だからアリアによって低音楽器でリズムやアタック音でアクセントをつける指揮者もいるわけだが彼の場合にはそれはほぼない。しかし一つのアリアと次のアリアとのコントラストはテンポといい強弱といい思い切ってつける。その結果、メロディーラインや、曲の大きな流れを聞き取ることは容易になるし、アリアと次のアリアのコントラストがくっきりつくので曲のより大きな構成が前景化する(目立つ)。

歌手はヘラクレスがブランドン・シーデル(バスバリトン)。体格よく(ヘラクレスの場合はこれも重要な要素かと思う)声も朗々と響き立派なヘラクレスであった。妻のデイアニーラはクリスティーナ・ハマーシュトレーム(メゾソプラノ)。メゾらしい大人の色気をたたえた声で嫉妬にもだえ苦しむアリアやアジリタを駆使していた。昨年は同じ役をハレンベリが歌っていたそうだ。オエカリアの王女イオレはローレン・ロッジ=キャンベル(ソプラノ)。小柄だが澄んだ通る声でアジリタもしっかり。ヘラクレスの息子ヒュルスはモーリッツ・カレンベルク(テノール)。英語の発音が妙に二重母音を強調したり強弱を強調して歌として聞き取りにくいのが難であった。従者リカスはジェイムズ・ホール(カウンターテナー)。案外出番が多い役で、演技・歌ともにナチュラルな良さがあった。

このオペラ(オラトリオ)では、合唱も活躍する。ヘンデル音楽祭合唱団が2016年に結成され、2017年の《セメレ》から登場したようである。彼らは歌うだけでなく、デイアニーラの嫉妬を表現するために彼女に密着して取り囲むといったその場その場のエモーションを表現する役割も果たしていた。またある時には舞台の両袖に姿を隠して声だけが聞こえて来たがそれもまた効果的であった。

 

 

 

 

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