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2023年2月20日 (月)

コルセッリ作曲《シーロのアキッレ》その1(あらすじ)

フランチェスコ・コルセッリ作曲のオペラ《シーロのアキッレ》を観た(マドリッド、テアトロ・レアル)。

素晴らしい上演で、歌手もオケも演出・舞台も見事なものだった。コルセッリはイタリア出身でスペインに渡った18世紀の作曲家で今回の上演が現代における本格的な復活の第一弾である。このオペラの蘇演は、もともとは2010年3月に企画されていてゲネプロも終わり本番寸前までいっていたのだが、その頃新型コロナがヨーロッパ中で広まり、スペインもその猛威に襲われやむなく中止になった。それから3年。

ついに日の目をみた復活上演である。

リブレットはメタスタージオによるもので、そもそもはヴィーンでマリア・テレジアとフランツ1世シュテファンの結婚式を祝福するオペラとして書かれ、曲を付したのはカルダーラだった(1736年2月)。それから8年後の1744年にフランチェスコ・コルセッリが曲を付してマドリッドのReal Coliseo (宮廷劇場)で上演された。これまたスペインの皇女マリア・テレーサ・ラファエラとフランスの王子ルイ(ルイ15世の息子)の結婚を祝するオペラであった。

こうしたオペラ誕生の機縁は、リブレットに反映されていて、何回か合唱が登場するのだが、バッコスの祝祭をことほぎ、最後は二人の若者の結婚(アキッレとデイダミア)を祝福するという形をとっていた。

今回の演出ではモック(無言の役)で、インファンタ(スペイン皇女)が出ずっぱりで舞台上にいた。またオペラの最初と最後には彼女の両親および婚約者のフランス王子が登場して彼らの結婚を祝福するオペラだということが明快に理解できるようになっていた。

今回の上演は、言わばスペイン・バロック・オペラの現代における復活上演第一弾であり、それはキャスティングからもうかがえる。タイトル・ロールは、カウンターテナーの第一人者フランコ・ファジョーリ。残念ながら病気のため(コロナか?)現時点では17日の初日と19日は代役のガブリエル・ディアスが歌った。このオペラのストーリーはメタスタージオがギリシア神話とトロイ戦争のエピソードを自由に改変したもので、アキッレ(アキレス)は、彼の母が彼がトロイ戦争で死ぬという予言を聞いて息子の死を避けるために、シーロ(シロス島)のリコメーデ王に託す。アキッレは女装して育てられ、リコメーデの娘デイダミアと恋仲になっているが、まわりの者たちにはアキッレは女性ということになっている。またなぜかリコメーデ王もアキッレが本当は男性であることを知らない。ここまでが幕があがるまでの前提である。

幕が上がると合唱がバッコスの儀式を歌い、その中に女装したアキッレ(ピッラという別名でまわりの者には知られている)とデイダミアがいる。そこへある船が近づいてきたという知らせがはいるがそこにはウリッセ(オデュッセウス)が乗っており上陸する。彼はトロイ戦争を勝ち抜くためにはギリシア軍にとってアキッレが必要だと考え、アキッレを探し求めてやってきたのだ。アキッレを女装したピッラとして隠し通そうとするデイダミアと、なんとか正体をあばこうとするウリッセの知恵比べ、またその両者の間で揺れ動くアキッレ=ピッラの心情がこのオペラの中核といってよいだろう。

デイダミアの父王リコメーデは、デイダミアの夫候補としてテアジェーネを紹介するが、デイダミアは激しく拒絶する。またそれを知ったアキッレは嫉妬する。嫉妬したアキッレ(ピッラ)にテアジェーネは惹かれてしまうのだった。

第二幕

知恵者のウリッセは、ヘラクレスのいくつもの像が並ぶところで、いかにヘラクレスが英雄かを讃え、部下アルカーデにアキッレの反応を観察させる。さらに王リコメーデはアキッレ=ピッラに娘が婚約者を受け入れるよう説得してくれと頼み、アキッレは当惑する。師のネアルコにこれ以上女装は耐えられないと嘆く。

二幕の途中だがここで上演は前半が終わり、休憩。

ギリシア人たちを歓待するため、王リコメーデはアキッレに歌を歌うよう望む。彼はチターを弾きながら歌う(ここでオケの中にチターが入り、独特の音色が加わるのだった)。ウリッセの贈り物が運びこまれる。女性たちは宝石や衣装に歓声をあげるが、アキッレは盾と剣に惹かれる様を暴露してしまい、正体があらわれそうになる。ここでウリッセとアルカーデが一芝居うつ。敵がこの島に攻めてきたと騒ぐ。皆逃げるがアキッレは残り、盾と剣を手にとり、女装をかなぐり捨てる。そこへウリッセが登場し、英雄としてのアキッレを讃える。師のネアルコはそんなことをすればデイダミアがどれだけ悲しむかとアキッレを非難する。

第三幕

アキッレとウリッセは船で島を出発しようとしている。そこへデイダミアがやってきてアキッレを非難。アキッレは島に留まることにする。

宮廷前でアキッレはデイダミアと結婚したいとリコメーデに言う。婚約者だったテアジェーネはいさぎよく諦める。こうしてめでたく二人が結ばれ、王はアキッレにトロイ戦争にでかけることも認める。

以上があらすじである。

 

 

 

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