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2022年12月 8日 (木)

ドナテッラ・ヅィリオット著 長野徹訳『トロリーナとペルラ』

ドナテッラ・ヅィリオット著、長野徹訳『トロリーナとペルラ』(岩波書店)を読んだ。

ヅィリオットは、イタリアのトリエステ生まれの児童文学作家、児童書編集者、批評家でトーベ・ヤンソンやロアルド・ダールなどを翻訳してイタリアに紹介した翻訳家でもある、というのは訳者の後書きで知った。

『トロリーナとペルラ』は二人の少女の名前で、トロリーナは「野暮らし族」のお姫様。一方のペルラは、都会生まれの赤ん坊。その二人が密かに取り替えられるという「取り替え子」の枠組みを持った話である。「野暮らし族」は妖精的でもあり、ロマのようでもある存在あるのだが、美化はされておらず、空き缶をたんつぼとして使えることを発見して喜ぶところから話が始まっているのだ。

二人の少女が入れ替えられたことで、少女の人生も一変するが、彼女らが住む家族、コミュニティも大小の変化を蒙る様子が描かれる。

たとえ「取り替え子」が元にもどっても、コミュニティにもたらされた変化は元に戻らないほど不可逆的なものであることが、ある意味で味わい深い。

 

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