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2022年9月 9日 (金)

ジャニーヌ・ドゥ・ビク・リサイタル

ソプラノ歌手ジャニーヌ・ドゥ・ビクのリサイタルを聴いた(バイロイト、辺境伯劇場)。

'Mirrors'と題されたリサイタルだが、これは彼女が最近録音したCDアルバムのタイトルでもあって、曲目は重複しているらしい。

何がミラーかというと、例えば

冒頭でヘンデルのオペラ《パルテノペ》の序曲が演奏されるが、休憩後の冒頭ではヴィンチのオペラ《パルテノペ》の序曲が演奏された。

2曲めに演奏されたのは、グラウンのオペラ《ロデリンダ》のアリアだが、3曲目はヘンデルのロデリンダのアリアという具合。同一の歌詞のアリアではないが、同じ題名のオペラのアリアを2人の作曲家で比較するという趣向が貫かれていて、聴く方は、単にドゥ・ビクの歌唱を味わうだけでなく、作曲家が同じ題材をどう扱ったか、作風の違いを味わうことが出来て聞きがいが2倍になるというものだ。

扱われた作曲家は、ヘンデル、ヴィンチ、グラウン、テレマンで、この日のオケはコンツェルト・ケルン。コンサートマスターは Yves Ytier. この団体は、きわめて合奏能力が高い。弦楽器も上から下まで実に達者で早いパッセージも難なくこなす。管楽器も同様。コンサートマスターの音楽的な傾向なのかも知れないが、はじける感じはあまりなく、適度に弾みながら決して音楽的に乱れたり破綻をきたさないというタイプであった。

ドゥ・ビクは、柔軟性のある声で早いパッセージもかなり見事にこなすのだが、アジリタ部分でところどころまわりきれない部分があり、それと関連するのだが、カント・バロッコとしての様式観が、ロマン派風の歌唱法に流されてしまう面があった。最大の問題点は発音が聞き取りづらくイタリア語の歌詞が聞こえてこないことで、これだけの声の持ち主なのだからもったいないことだと思った。

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