フランソワ・クープラン「ルソン・ドゥ・テネブル」
フランソワ・クープランの宗教曲「ルソン・ドゥ・テネブル」を聴いた(バイロイト、オルデンス教会)
テネブルあるいはテネブラエは、旧約聖書のエレミアの哀歌が歌詞である。預言者エレミアの嘆きが中身だ。
ルイ14世のごひいきの作曲家リュリが1687年に亡くなった後、教会音楽家兼オルガニストとして採用されたのがクープランだ。リュリは王家の子弟に鍵盤楽器を教えた他、宗教音楽や鍵盤楽器のための楽曲を次々に作曲した。
ルイ14世が亡くなる1年あまり前の1714年頃からクープランはルソン・ドゥ・テネブルの作曲を始めた。預言者エレミアは、紀元前589年頃にネブカドネザルによってエルサレムがソロモンの神殿を含め破壊されたことを嘆いた。この旧約聖書の言葉は、ルネサンス期から復活祭前の3日間、嘆きの日の音楽に用いられるようになった。17世紀後半から、9つの詩編に曲が付され、3日間(聖木曜日、聖金曜日、聖土曜日)に3曲ずつ演奏された。1つ終わるごとに、9つの枝にわかれた燭台のろうそくが1本ずつ消される。この日の演奏では、枝分かれした燭台に複数のろうそくが灯されていたが、聖週間ではないので、ろうそくを消すことまではしなかった。
上記のように本来は9曲から構成されるはずなのだが、クープランの場合3曲が現存していて、6曲が消失したのか、それとも何らかの事情で作曲されなかったのかは不明である。楽曲はグレゴリオ聖歌のような単旋律聖歌の様式で始まる。各歌はヘブライ語のアルファベット(アレフ、ベット、ギメル。。。)が付されている。いずれの曲もイスラエルの人への訴えで終わっている。
演奏は、ソプラノがヨハンナ・ローサ・ファルキンガーとマリ—・テオリール。ロリス・バルカンのオルガン。フランソワ・ガロンのチェロ。
レチタティーボ的な部分とアリオーゾの部分があり、1曲目、2曲目はソプラノ1人、3曲目のみが二重唱だった。アンコールはモンテヴェルディの聖母マリアの夕べの祈りから。
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