ジョヴァンニ・ボノンチーニ作曲《グリゼルダ》(4)
ジョヴァンニ・ボノンチーニ作曲のオペラ《グリゼルダ》の楽譜復元について、それを担当したDragan Karolic が書いている報告のあらましを記す。
彼が《グリゼルダ》の一部を聴いたのは1985年のことで、レチタティーボなしのアリアがいくつかの抜粋のレコードで1967年録音のものだった。その経験が心に残りつづけ、2005年にロンドンのブリティッシュ・ライブラリーからデジタル・コピーを作成した。音楽学者兼出版者として、忘れられたオペラを聴衆に近づきやすい形で提供したいと願う気持ちが強まった。昨年(2021年)の9月にツェンチッチから電話で申し出をうけ喜んで承諾した。
《グリゼルダ》の総譜は、有名なチャールズ・バーニーが所持していたのだが、1814年に彼が亡くなって売りに出され、その後行方不明となってしまった。
最初、 Dragan Karolic のもとにあったのは1722年と1733年のリブレット、ジョン・ウォルシュの出版したスコア、いくつかのアリアの手稿譜であった。これらのソースにはレチタティーボと管楽器およびヴィオラのパートが欠けていた。それを再構築、復元する必要があったわけだ。幸い、いくつかのアリアなどは印刷されたスコアに全体が保存されていた。即ち、序曲、いくつかのアリアと最後のコーラス(登場人物の全員合唱)、そして強弱などの指示、通奏低音の記号が書き込まれていた。アリアにオーケストレイションを付け終わったところで、ベルギーのDenee で知られていなかった手稿を発見した。それには12のアリアが含まれ、ヴィオラのパートが完全に書かれていた。そこでスコアを書き直して新たな情報を統合した。
レチタティーボ・セッコとレチタティーボ・アコンパニャートを作成するのは時間がかかった。1733年版のリブレットは短縮版でおよそ3分の1がカットされていた。 Dragan Karolic は1722年版にもとづいて復元をした。彼はツェンチッチとボノンチーニ研究者のローウェル・リンドグレンに感謝の言葉を捧げている。
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