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2022年9月 9日 (金)

《インドのアレッサンドロ》の演奏評

このオペラの上演は、非常に質が高かった。念入りに時間をかけて演奏も演技も練られたものであることがうかがえたし、蘇演であるにも関わらず、歌いぶりが堂々するところは堂々とし、叙情的な部分は細やかな情感を伝え、細部に至るまで荒削りなところがない。

フランコ・ファジョーリ(ポーロ)やブルーノ・デ・サ(クレオフィデ)らの歌手の演技・歌唱は極めてレベルの高いものであったのもさることながら、指揮・ヴァイオリンのマルティナ・パストゥスツカの弾き振りは、尋常のレベルではなかった。彼女は、一昨年にヴィンチの《ジスモンド》を何度も引き振りすることで、完全にヴィンチのスタイルをマスターし、今年はさらに踏み込んだ積極的な表現を選び取っているのがうかがえた。

リズムが生き生きとしているのはもちろん、フレーズの装飾音自体が、実に音楽的に響き、メロディーに対して装飾がついているというよりは、装飾音もふくめたフレーズが生命を得て踊り出すといった喜びに満ちた音楽なのである。上演時間は休憩を含め5時間、演奏時間は正味4時間ほどであったが、まったくだれるところがなく、次から次へと表情豊かな音楽が繰り広げられていく。会場の拍手も、主役級歌手に劣らず彼女に惜しみなく贈られてていたのも実に納得のいくことだった。



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