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2022年9月 8日 (木)

レオナルド・ヴィンチ作曲《インドのアレッサンドロ》(1)

レオナルド・ビンチ作曲、メタスタジオ台本のオペラ《インドのアレッサンドロ》を観た(バイロイト、辺境伯劇場)。

第三回となるバイロイト・バロック・オペラ・フェスティヴァルのオープニング公演であり、演奏も演出も時間をかけて練り上げられたことがひしひしと感じられる充実したものだった。

去年、一昨年のバイロイト・バロック・フェスティヴァルのメインの公演はポルポラのオペラ《カルロ・イル・カルヴォ》だったので、このバロック・オペラ・フェスティヴァルは今のところナポリ派の埋もれた作品を蘇演している(《カルロ・イル・カルヴォ》の場合は、コンサート形式で他の場所で先に演奏はした。しかし舞台を伴ったものはこの音楽祭での公演だったので、どちらを蘇演と呼ぶかは蘇演の定義次第となろう)。

今回の《インドのアレッサンドロ》の場合は完全に蘇演である。

アレッサンドロというのは古代ギリシアのアレクサンダー大王のことで彼のインド遠征が歴史的背景としてある。メタスタジオのオペラ・セリアの台本ではよくあることだが、主要登場人物やその人物間の敵対関係、支配・従属関係は歴史書にほぼ従っておいて、そこで敵味方を越えて、あるいは味方のなかでの恋愛関係はメタスタジオが自由に創作したものというパターンを踏んでいる。

このオペラの初演はローマのテアトロ・デッレ・ダーメであるが教皇の方針により当時は教皇領のもとで女性歌手が歌うことが禁じられており、アレッサンドロの妹エリッセーナも、インド王ポーロの婚約者クレオフィデも男性歌手(カストラート歌手)が演じていた。今回の上演でもそれを踏まえて、歌手は全員男性でエリッセーナ(ジェイク・アルディッティ)もクレオフィデ(ブルーノ・デ・サ)もカウンターテナー歌手が演じていた。細かく言うと、いわゆるカウンターテナー歌手には広義のものと狭義のものがあって、広義の場合には女性歌手の音域で歌っている人をカウンターテナーというが、通常はメゾかアルトの音域の人が多い。カウンターテナーの中でソプラノ音域を歌う人は一般のカウンターテナーと区別してソプラニスタと言う場合もあり、クレオフィデを演じたデ・サはまさにソプラニスタで、化粧が巧みなこともあり、日本の歌舞伎の女形以上に、女性になりきっていた。エリッセーナ役のアルディッティも姿に関しては同様で、メイクアップをプロがやると胸の膨らみも含め少し距離が離れるとまったく女性に見えるのだった。ちなみに当日はバレエダンサーも10人ほど出てきて複数の女性役がいたのだが実は全員男性が踊っていたのである。

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