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2022年9月 9日 (金)

《インドのアレッサンドロ》演出その1

前項から続くヴィンチ作曲メタスタジオ台本のオペラ《インドのアレッサンドロ》の今回の上演(第3回、バイロイト・バロック・オペラ・ファスティヴァル、2022年9月)の演出意図について、演出のマックス・エマニュエル・ツェンチッチが語っているので、筆者の意見も交えてご紹介する。可能な限り、演出意図と筆者の意見は区別がつくように記す。

ツェンチッチは音楽監督として、この音楽祭の企画にも関わっているわけだが、ある一つのテーマで固めようとするのではなく、バロック期の汲めどもつきぬ作品群の中から、埋もれているもの、当時から現代まで演奏されていないものを発掘し、取り上げることを第一に考えているという。そのため音楽学者とも綿密な協力関係を持ち、復活させるにふさわしい作品を探し続けているとのこと。

もう1点彼が重視しているのはアーティストの質である。筆者も常々感じているところだが、どの時代の音楽でも演奏者の質が大切なのは言うまでもないことなのだが、バロック期の作品は、演奏者に対する依存性、とりわけ技巧的依存性が高いと考える。カストラートの場合が典型的だが、10代前半からプロになるべく徹底的な音楽教育、歌唱の訓練をほどこされたものがスターになるシステムでは、作曲家も高度な技巧を駆使できる歌手を前提にして(多くの場合、特定の歌手に当て書きして)作曲しているわけで、その技巧を駆使できる歌手が激減した時に、バロック・オペラが上演されなくなったのは、趣味・趣向・流行の問題とあいまって、納得のいく話である。



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