コモの《チェネレントラ》
コモの Teatro Sociale でロッシーニの《チェネレントラ》を観た。
前項と同じOpera Education のものだが、今回のは観客がほぼ小学生のみ。引率の先生と数名の父母はいるが、5つのクラスの子供たちがやってきた。子供たちは、劇場関係者たちは coro (合唱団)と呼んでいたが、五カ所で舞台上の歌手とともに、あるいは掛け合いのようにして歌う。掛け合いというのは、同じ言葉を繰り返すところで、歌手と子供たちが一度ずつ歌うのだ。子供が歌うところでは指揮者は、オケに背を向け、客席に向かって指揮をする。単にテンポや拍をを合わせるだけでなく、身をかがめるようにしてpiano (小さく)と要求したりすると、
子供合唱団の声は少し小さくなるのだった。
この日は前項の日と異なる指揮者(Lombardi)だったのだが、もともと彼が指揮者で練習を積み上げてきたのだが、直前にコロナ感染
があり、前項の日には代役の指揮者(A.Palumbo)が振っていた。この舞台は、指揮者と演出家が念入りに調整・打ち合わせをして、音楽にあわせたギャグ、ずっこけの仕草が盛り込んであるので、指揮者が替わってテンポが変わってしまうのはやりずらかったとのこと。この日は元の指揮者に戻った公演だったので、演出のねらいのピントがあった感じだった。
上演時間は1時間半の短縮版(休憩無し)だが、ところどころ自分が歌うにせよ、よく集中が続くものだと感心したし、それどころか、カーテンコールの時に立ち上がって、スタンディング・オベーションする複数の子供を劇場で初めてみた。飛び跳ねている子もいたし、ブラーヴィとか声をあげている子もいる。小学生の熱い反応に、心動かされた。
歌手、オケ、演出等、当日の出演者の貢献はもちろんだが、この企画は Opera Education というプロジェクトが1996年から続いていて、小学生はあらかじめ5つの歌は練習して歌えるようになっている。当ブログでも紹介したが、ベルガモでの《愛の妙薬》では一般客に、合唱の一節を劇場に入場して上演前に練習させ、その場面で観客も歌うという試みがあった。たしかに、自分も参加すると、劇中への入り込みが深まる。大袈裟に言えば、舞台との一体感のようなものが形成される、少なくともそういうベクトルが生じる。
ベルガモの時よりも、今回の《チェネレントラ》では子供たちの歌う箇所、分量は多かった。そういう準備があってのこの日だったのだ。
こういうプロジェクトに参加した子供はこれまで14万人、教師7000人、公演数289という数字があがっている。このプロジェクトはコモだけで上演するのではなく、通常は150公演、今年はコロナの影響で98公演を敢行する大プロジェクトである。
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