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2021年12月22日 (水)

フィレンツェのシナゴーグ その3

フィレンツェのシナゴーグは、現在のものは1881年に20年間の計画・建築期間をへて建ったものである。

もっと古いものがかつてはゲットー(現在の共和国広場)に2つ、さらに古くはオルトレアルノにもあったらしい。

現シナゴーグは美術的に言えばモレスコ様式(スペインのアンダルシアなどで見るムスリムの建築様式)である。イスラム教徒の様式ではあるが、人物像が描かれておらず、植物的、幾何学的な模様で壁や天井の模様が構成される点では、ユダヤ教にとっても都合がよいのだと思われる。ガイドによると、シナゴーグは、建設される時代に流行っている建築・美術様式が採用されることが多いそうだ。

ただし、キリスト教の教会建築の影響が皆無かというとそうではなくて、このシナゴーグには、説教壇とパイプオルガンがあり、これらはカトリック教会に通常あるものが取り入れられたとのこと。

また、壁の装飾は計画時点では金箔をはった豪華なものにしたかったそうだが、建築費用がそこまでまかなえず、別の素材を用いたとのことで、実際に堂内を見ると金ぴかという感じはまったくなく、むしろ落ち着いた色合いである。

宗教的な施設で神(あるいは仏)の偉大さ、栄光などを称えるために金箔が使用されている例は数多くあるわけだが、奈良・京都の古寺を見慣れてくると、まったく剥落もなく金ぴかであるよりも、やや鄙びた感じになったものにありがたみを感じたりする感性もありうるわけだ。無論、日本でも奈良・京都の古寺・仏像も最初から古寺だったわけではなく、建造当初はピカピカだったわけで、何を尊いと感じるかの感性も、時代や地域、その文化に大きく左右されるのだろう。

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