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2021年11月22日 (月)

アカデミア美術館

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ヴェネツィアのアカデミア美術館を見た。

この前に訪れたのが10年ほど前なのだが、日本風に言う一階の展示の仕方が変化していた。一階部分でハイライトというか大まかな美術の歴史的な流れを15ー19世紀くらいまでなぞって、それから二階に行って展示室1から順番に見るという仕組みになっている。

一階の新しい部分は新しく出来たので、文字が大きくて読みやすいのだが、二階に行くと昔の表記がそのままで絵の作成年などが小さくて見えにくいのだった。

アカデミア美術館のコレクションは当然ながらヴェネツィア絵画の粋が集められているわけで、それについては触れない。今回、回ってみて気がついたこと、感じたことを2つ記す。

1.一階の解説にもあったのだが、17世記になるとなんだか絵に精彩が乏しくなるのだ。15、16世紀にはスターが目白押しで、18世紀にもティエポロなどがいる。その谷間にあって17世記は、解説でも、美術批評でも積極的に扱われない時期が長かったというようなことが書いてあった。これはなぜなのか。もしかすると16世紀に始まった宗教改革、そして対抗宗教改革による影響はないのだろうか。

2.それと関連するのだが、16世紀半ばに活躍したヴェロネーゼの巨大な絵は、現在「レビ家の饗応」というタイトルになっているが、もともとは修道院の食堂に「最後の晩餐」として飾られるはずだったらしい。ところが絵の描き方があまりに派手などという理由でヴェロネーゼが宗教裁判にかけられ、ヴェロネーゼはドメニコ会修道士のアドバイスを得て、絵の中に書かれた文字を修正して、最後の晩餐ではなくレビ家の饗応であるということで事なきを得たという話が紹介されていた。画面のはじにいる召使いや道化の描き方がどうのというので、この時期随分検閲が厳しくなったのかと推察した。おそらくそれは宗教改革、対抗宗教改革の余波的なものがあるのではないだろうか?ヴェロネーゼの事件は16世紀だが、17世紀にかけてさらに厳しくなったのかどうか、その辺を知りたいと思った。一般的に言えば、ヴェネツィアはヴァティカンからの独立性が他の地域より高いわけだが、対抗宗教改革の時期になるとそもそもヴァティカンの姿勢自体が、以前と比べてはるかに厳格化あるいは反動化した面があるのだ。また、ヴェネツィアのヴァティカンとの関係も、ヴェネツィアの対トルコ戦争(キプロス島などをめぐる争い)の状況により、ヴァティカンとは事を荒立てたくない、という時期もあったようだ。

3.オペラに出てくる神話的場面の絵画。先日スカラ座で見た「カリスト」関係の絵画が何点かあった。「ディアナとカリスト」関係が2点、そのうちの1点はディアナがカリストが妊娠しているのを発見するというものだった。またディアナとカリストの隣に同じ作者(リッチ)の牧神パンの乱痴気騒ぎみたいな絵があり、これもまた内容としてはカリストの話に繋がる。制作年代はむしろ絵画が後だったかと思うが、ギリシア・ローマ神話の題材はかく身近に感じられていたということだろう。

4。時代が下って19世紀のハイエツ(肖像画などが有名)に、「リナルドとアルミーダ」の絵があるのに驚いた。リナルドやアルミーダはバロックオペラによく出てくるし、ロッシーニも作品を作っている。ハイエツはリアリスティックなタッチで神話的人物二人が睦まじくしている様を描いているのが興味深かった。

以上、全く現在の僕の関心のバイアスに基づいた極私的感想でした。絵画に関心が深い人が観て充実していることは言うまでもないのだが、そこから外れた観点からでも興味深い作品があると言うことです。

 

 

 

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