カヴァッリ《カリスト》その2
《カリスト》のあらすじを紹介する。ここには2つのストーリーが錯綜している。
1つは、相対的に有名な話で、ジョーヴェ(ゼウス)がディアナの侍女のカリストを見初めるが、ディアナは貞潔の女神なので、侍女も簡単には誘惑できない。そこで、ジョーヴェの付き人であるメルクーリオが案をさずける。カリストはお仕えするディアナをこの上なく慕っているので、ディアナに化ければよい、というのだ。ジョーヴェがいろいろな人、動物、ものに変身して人間やらニンフやらを手中におさめる話には事欠かないから、またか、という感じであろう。実際、ジョーヴェの妻ジュノーも、カリストから話をきいてピンとくる。
カリストの話によると、最初、ディアナは自分と抱き合ってキスも(多分それ以上も)したのに、次にあったときはけんもほろろ、激しく拒絶されたというのだ。それを聴いてジュノーは、カリストと抱き合ったときのディアナは夫ジョーヴェが変身した偽ディアナだったとピンと来るのである。怒ったジュノーは、復讐の女神を連れてきて、カリストを熊に変えてしまう。ジュノーが熊に変えてしまったことは、ジョーヴェをもってしても元にはもどせないのである。
これが1つ目の要素で以下で述べるあらすじでも前提となる。
もう1つはディアナの恋愛。ディアナと言えば月の女神で貞潔のシンボルのような存在のはずだが。。。
このオペラでは、まず、エンディミオンという羊飼いで天体観察者が出てくる。彼は近寄りがたい月の女神ディアナに憧れている。ディアナはふとこのエンディミオンに恋におち、こっそりキスをしたりする。ディアナの侍女の一人リンフェアはそれを見て、ディアナから離れる。ディアナは完全には思いをとげぬまま、エンディミオンから離れるが、そこへカリストがやってきて愛の抱擁を求めるので激怒する。カリストは何がなにやら判らず混乱する。リンフェアは自分も愛が欲しいとつぶやくと、そこへサティロ(けむくじゃらの半人半獣、このオペラでは肉欲を具現化したような存在)がやってきて俺でどうだとなるが、リンフェアは逃げていく。ここでさらに牧神のパーネ(パン)と森の守護神シルヴァーノが出てくるが省略。このオペラ、登場人物が多いのである。牧神は部下のサティロたちを引き連れているが、牧神やサティロ、シルヴァーノらは地上的な肉欲的愛を表象している。ジョーヴェやディアナは天から地への愛。エンディミオンは地上から天への愛で、ベクトルが異なるわけだ。
第二幕
エンディミオンは夜山に登り、月の光をあび眠ってしまうが、そこへディアナ登場し、寝ているエンディミオンにキスをする。眠っているエンディミオンはまさにディアナを夢見ていたのだが、目が覚めてみるとディアナが自分にキスをしていたわけだ。このようすを隠れてみていたのがサティロで、牧神パンにディアナの秘密の恋人を報告する。
ここでジュノーネが天から降りてきて、カリストの悩みをきき、ピンとくる場面がある。そこへ偽ディアナ(実はジョーヴェ)とメルクリオがやってきて、カリストは偽ディアナにかけより、ディアナはデートの約束をするが、ジュノーが立ちはだかる。ジョーヴェとメルクリオはとぼけたフリを続ける。ジュノーはただではおかないと言いつつ去る。ジョーヴェはカリストに会いにいこうとするが、そこへエンディミオンがやてきてこの偽ディアナに抱擁を迫る。ジョーヴェとメルクリオは貞節なはずのディアナに人間の恋人がいたことに驚き面白がるが、そこへ突然パンやシルヴァーノやサティロがやってきて話がいっそうこんがらがる。彼らはエンディミオンをつかまえて虐待し、ディアナに彼のことを諦めさせようと願う。ジョーヴェとメルクリオは退散。エンディミオンを連れて森へ帰る途中でサティラはリンフェオに会い、隠れる。サティラは自分の仲間を呼び、リンフェオも自分の姉妹のニンフェをよび、サティラ群対ニンフ群の戦い(踊り)となる。
第三幕
川のほとりでカリストがディアナを待っていると、そこにやってきたのは、ジュノーと復讐の女神たちだった。ジュノーはカリストを熊に変え、復讐の女神にカリストを虐めるようにと言い去る。元の姿に戻ったジョーヴェとメルクリオがやってきてカリストの運命を知る。ジョーヴェはカリストに正体を知らせ、人間の姿にはわずかな間しか戻してやれないが、死後はお腹の赤ん坊とともに天に昇らせてやると約束する。その場所を教えるため、ジョーヴェ、メルクリオ、カリストが天に昇る。
その間、牧神パンとサティロたちはディアーナをあきらめないエンディミオーネを虐待し続ける。ディアナが助けにやってきて、牧神パンやサティラたちを森へ追いやる。牧神とシルヴァーノは、ディアナの色欲と偽善を森中にふれまわる。ディアナとエンディミオーネは互いの愛を告白する。エンディミオーネはキスを求め、そうすれば、ラトモス山の頂上で永遠に眠りつづけ毎晩ディアナのキスを夢見るだろうという。ジョーヴェはカリストを天界に連れて行く。カリストは彼女の魂が以前にここにいたことに気づく。また熊の姿に戻る時がやってくる。運命の命にしたがい、大熊座が夜の天に輝くであろう。
というのがあら筋です。最初の説明があるので、幕毎のあらすじとダブっているところがあります。ご了承ください。
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