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2021年8月29日 (日)

コンサート《Aus der Zeit》その1

またまた無料のお昼のコンサート。《Aus der Zeit》(時の中から、ということか。

これはオーガナイズの仕方としては、なかなか複雑で、La florida Capella という古楽の団体{2020年に設立されたオーストリア、イタリア系の団体)が、1日3回または4回ミニコンサートを開いているのだが、その3回、4回それぞれ場所が異なる。いずれも教会・礼拝堂ではあるのだが。

最初に聞いたのは Jesuitenkirche (イエズス会の教会ですね)でのもの。

カウンター・テナーのフェデリコ・フィオーリオの歌が中心だったが、プログラムにはソプラノと書いてある。調べてみるとフェイスブックなどでは彼自身は自らをソプラニスタと規定している。ソプラニスタとカウンター・テナーはどこで線引きがなされるのだろうか。同じプログラムを二回目は大聖堂(Dom zu St.Jakob)で聴くことが出来たので、本人に直接尋ねてみた。彼によると、ほとんどのカウンターテナーはアルトの音域で歌っており自分はソプラノの音域で歌っているからソプラニスタなのだ、ということで、音域の違いをあげていた。

伴奏者はテオルボのアレッサンドロ・バルデッサリーニとヴィオローネ(チェロの古い形)のヨアヒム・ペダルニッヒ、音楽監督のマリアン・ポリン。4人のメンバーで音楽監督と思われるかもしれないが、たまたま演奏会の始まる少し前について練習風景を見ることが出来た。マリアン・ポリンは、練習の際には、ここはリズムはこう、といって歌やヴィオローネに指示を与えていた。

曲目は

Francesco Cavalli (1602-1676) のモテット O quam suavis es et decora

その後が器楽曲でGiovanni Girolamo Kapsberger (1580-1651) のToccata seconda (Intavolatura di Chitarrone の第一巻、ヴェネツィア、1604)

再び声楽曲で Barbara Strozzi (1619-1677)Parasti in dulcedine. Al Sacramento ('Sacri musicali affetti' 1655 から)

この曲は、カヴァッリの曲(素直に美しい)と較べると、半音階に満ちて、不安や苦悩の表情がうかがえる劇的なものであった。この曲集はバルバラ・ストロッツィがアンナ・デ・メディチというメディチ家からインスブルックのフェルディナンド・カール大公に嫁いだ女性に献呈したもの。インスブルックとの縁が深い。中間部になると、喜ばしい曲想に転じる。曲想の振れ幅が大きいし、リズムの動きもドラマティックである。

次がまたKapsberger の器楽曲でCiacona.  (こちらはIntavolatura di Chitarrone の第四巻)

終わりが Maurizio Cazzati (1616-1678)の Ad tuba, ad cantus .{ボローニャ、1666)。モテットである。これは非常に、弾む楽しげな曲で、テンポも早く、伴奏も弾んでいた。当たり前だが、17世紀の曲でも、聞き慣れてくると随分バラエティーに富んでいると感じる。

こういう教会で聞くと例によって残響が長く、休止符の長さをどれくらいとるかは、残響が収まるまでの時間に左右されるだろうと思った。

つまり、テンポ設定も、単に曲想によるだけでなく、音が次々にかぶるのを防ぐためには、休符やテンポの設定が重要になってくる。この日の演奏でFederico Fiorioはそのあたりが実に見事で、綺麗に透明感のある声を響かせていた。カヴァッリとストロッツィの歌いわけも説得力のあるもの。

30分ほどではあるが、贅沢なひとときである。彼らの団体設立趣旨のなかに、イタリアからハプスブルク領にかけての初期バロック音楽は、まだまだ発掘されていないものがあり、その多様性を全体として把握しきれないという認識があるが、まったくその通りだと思う。

バロック音楽の研究、演奏は次々に新しい地平が切り開かれている。彼らもその一翼を担いたい、ということだ。

フェデリコ・フィオーリオのバロック・オペラでの姿、活躍も観てみたいものだと思う。

 

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