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2021年2月 8日 (月)

鹿島茂著『太陽王ルイ14世ーヴェルサイユの発明者』

鹿島茂著『太陽王ルイ14世ーヴェルサイユの発明者』(角川書店)を読んだ。

鹿島氏の本らしく、ルイ14世をめぐる女性関係への目配りはぬかりない。寵愛を受けることになった女性が、どういう経緯でルイに巡りあい愛されるに至ったか。愛妾の中には看守の娘から成り上がった女性もいる。ルイ14世の父も、ルイの弟もゲイであったことも明かされる。

こういった男女および同性の愛憎関係だけでなく、フロンドの乱の叙述の際には、法服貴族というものが帯剣貴族とどう異なるかが、西洋史への知識がなくてもよく分かるように説明される。つまり法服貴族は、官位を金で買うのは当たり前で、後には王がそれを制度化した。ポーレット法と呼ばれる官職売買の法律が1604年に出来ているのだ。だからルイが即位した当時の官僚というのは、言葉は同じでも今日の官僚制度というのはまったく異なっており、いわば相撲部屋の親方のようなものだったと鹿島氏は述べている。「株仲間」の一種で、だからその官職は息子やあるいは持参金として婿に引き継がされることが出来たのである。

 ルイ13世が死んでルイ14世(ちなみに生きている間はルイ・ドゥ・フランスとか呼ばれないことも、システマティックな説明がある)は幼子であり、13世の王妃とマザランが政治的実権を握り改革をしようとしたところから、法服貴族の既得権益を大きく削ることになるのでフロンドの乱が起こった。フロンドの乱が起こってからの人間模様は詳細に描かれる。フロンドの乱だけで数十ページがさかれている。が、読み進めると、鹿島氏が主張するように、この何年にも渡る乱の際に命の危険にさらされる経験をしたことと、ルイが親政開始と時を同じくしてヴェルサイユ宮殿建設に着手することには深い関係があることが理解できる。

 また、フランスの中で北部は均等相続で南部は長子相続(貴族であっても次男、三男は、司祭になったり、軍人になって職を得る必要がある)といったことと、そういう貴族の次男、三男をどう政治体制に組み込んでいったかも明らかにされる。

 非常に生々しい人間関係(重用されていた重臣が、ふとしたきっかけで失脚する、あるいは寵妃が愛を失う)から、政治、外交、ヴェルサイユ宮殿建設の長いプロセスまでが、口語的な語り口で書かれている。宮殿をいくつ見ても宮廷生活というものはなかなかイメージできなかったが、この本を読んでおぼろげながらではあるが、以前と比べればずっと具体的にイメージできるようになった。フランスでも、ルイ14世の長い治世の間に宮廷は大きく変わるのであるから、他の国、他の時代はまた異なっていたであろうことは推して知るべしではあるのだが。ともかく、1つの基準点が出来たことに感謝。

 412ページの本なので、上に紹介したのはほんの一部であり、リュリやヴェルサイユ宮殿お披露目の時の祝宴・余興も詳しく描かれているし、何よりヴェルサイユ宮殿庭園の噴水をはじめとして宮殿の装飾、部屋の名前をはじめとしてすべて(究極的には王をたたえる)寓意を持っていることも詳しく紹介されている。平明な書き方で、かつ、実に楽しく面白かった。ピューリタンな道徳観をお持ちの方には、けしからん人物ばかり出てくるのでおすすめ出来ませんが。

 

 

 

 

 

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