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2020年12月31日 (木)

ツェンチッチとバイロイト音楽祭

マックス・エマヌエル・ツェンチッチはバイロイト音楽祭の総監督であるが、彼自身がインタビュー(音楽祭のプログラムに掲載されている)の中で、総監督になるまでのいきさつを説明しているので、大意を紹介する。

MEC(ツェンチッチの頭文字):わたしは20年間バロック音楽に関わってきたし、ここ10年はバロック・オペラのプロダクションに関わってきました。オペラ・セリアや知られざるオペラが定期的に再発見され、舞台で新たに日の目を見るような場所がずっとわたしの夢でした。わたしのプロダクション・カンパニーであるパルナッサス・アーツ・プロダクションはこの間、バロック・オペラをCDやDVDに録音・録画したり、コンサート形式や舞台で上演するのに大変成功してきました。だから私は、地元のパートナーのクレメンス・ルーカス博士とバイロイト市当局と合意に到り、市が辺境伯劇場が特別な劇場で、こうしたプログラムにふさわしいことを認識しているのにとても満足しています。これはまさに僥倖でした。わたしのやっていることに意義を与えてくれます。わたしがバイロイトでプロデュースするすべてのオペラには深い意味が与えられると思います。それらはバイロイト市のため、バイロイト市民のため、音楽祭を訪れるドイツや世界中の人々のために上演され、歌劇場に革新的なプログラムで新たな命を吹き込むのです。ここで観衆は世界のほかのどこでも味わうことのできないオペラを経験するのです。

 

以上がインタビューの一部分の大意だが、ツェンチッチやゲオルク・ラング(パルナッサスの社長)なくしては、バイロイト・バロック音楽祭がこのような成功をおさめることはなかったろう。バロック・オペラの中でもヘンデルはすでに各国で日が当たっている。日本でもようやく日があたりかけていると言ってよいだろう。ナポリ派の中で大物なのに上演数が少なかったポルポラ。その作品を、じっくりと作りこんだ演出とスター歌手および実力のある若手をそろえて驚異的にレベルの高い演奏で、こちらは唖然とさせられ、感嘆させられ、ポルポラの真価を初めて知った(これまでにもすぐれたアリア集のCDは複数あったのだが、やはりアリア集と全曲というのは次元が異なる)。コロナ禍における音楽史上の快挙、演奏史上の事件と言えるのではないだろうか。

付け加えておけば、バイロイト・バロック・オペラ音楽祭では、このポルポラの上演に、さらにヴィンチのオペラ《ポーランド王ジスモンド》の演奏会形式の上演があり、他にロミーナ・バッソやジョイス・ディドナート、ヴィヴィカ・ジュノーらのリサイタルがあり、全体のプログラムとして大いに充実したものであった。

 

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