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2020年5月12日 (火)

《エイシスとガラテア》

ヘンデル作曲の牧歌劇《エイシスとガラテア》の一風変わったCDを聞いた。

そもそもヘンデルの牧歌劇が珍しいわけだが、イギリスにやってきて間もない時期にシャンドス公爵に仕えていて、そこで私的に催すためにこの牧歌劇が書かれた。しかしその後、ヘンデルに無断で公演するものが出てきて、ヘンデルがそれに対抗して加筆したヴァージョンを作ったりしたので様々なヴァージョンがある。

台本も英語なのだ。ジョン・ゲイの作った台本にアレクサンダー・ポウプとジョン・ジューズが加筆したものらしい。ポウプは日本ではさほど有名でないかもしれないが、英文学的には超大物詩人なのです。元々のソースは、オウィディウスの『変身物語』。

しかし、僕が今回聞いたのは、それを後に、モーツァルトが編曲した版。周知のようにヴァン・スヴィーテン男爵というバロック音楽の熱心な愛好家のために編曲したもので、モーツァルトは《メサイア》も編曲しており、ヴァン・スヴィーテンとの交流からバロック音楽のエッセンスを吸収しており、それはジュピター交響曲を想起すれば明らかなように、晩年のモーツァルトの作曲に反映され、彼の音楽に一掃の深みと普遍性を与えていると言えるだろう。

このCDの演奏は、ペーター・シュライアーが指揮、オケはORF交響楽団。ガラテアがエディット・マティス。エイシスはアントニー・ロルフ・ジョンソン。デイモンがロバート・ギャンビル。ポリフェムがロバート・ロイド。演奏は、なんとも不思議な印象を受ける。ピリオド楽器のヘンデルに慣れた我々には、モーツァルト的なヘンデルだと思えるが、だからと言ってかつてのフルトヴェングラーのヘンデルなどのように大仰ではない。そこそこモダンなのだが、なんとも独特の味わい。かつこの版は歌詞がドイツ語である。

 

 

 

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