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2020年5月 7日 (木)

テリー・ウェイのリサイタル

カウンターテナ歌手テリー・ウェイのリサイタルを聴いた(カールスルーエ、クリストス教会)。

ヘンデルのオペラ『セルセ』を観た後、約2キロ離れた教会へ。トラムも結構走っているのだが、路線図を把握していないので徒歩で。われながらご苦労さんである。当初は午前に別の教会でのコンサートも考慮に入れていたのだが、さすがにパスした。

テリー・ウェイはスイス系アメリカ人でヴィーンで音楽教育を受けたとのこと。

この日のプログラムの副題には「孤独と憧憬」とあるように、冒頭がパーセルの'O solitude'で終曲がヘンデルの 'La solitudine' だった。パーセルに続いてダウランド(1563-1626)のThe lowest trees have tops, Robert  Johnson (ca.1583-1628) のHave you seen but a white lily grow. 

伴奏はリュートとヴィオラ・ダ・ガンバだったが、先日のチェンバロ伴奏より一層、古楽的な響きがした。リュートは絶対的な音量は決して大きくないのだが、教会のようなコンパクトでしかも反響豊かな空間では十分に鳴る。空間が大きすぎて拡散していく一方だと聞こえにくいのだ。Alfonso Ferrabosco (ca. 1575-1628)のPavin, Gigue.

再びJohn Dowland のIn darkness le me dwell, Can she excuse my wrongs, Come heavy sleep.

Christopher Simpson (ca.1605-1689)のPrelude in e-minor.

Michael Cavendish (ca.1565-1628)のWandering in this place

パーセルのIf music be the food  of love, Sweeter than roses

マラン・マレ(1656-1728)のLa Reveuse, Arabesque

ヘンデルの Nel dolce tempo, La solitudine

アンコールはJ.P. Krieger の孤独(Einsamkeit)であった。

先日のカウンターテナーはピンチヒッターだったので比較するのも気の毒なのだが、曲目がパーセルなどで重なっている。

テリー・ウェイの場合、曲の細部の表現により緻密な濃淡が見られ、音がフレーズの終わりで伸びていく時にも豊かなニュアンスを

聴かせていた。基本的には柔らかい音で、二重母音なども後ろの音はややそっと添える感じがある。それがこの教会という残響の多い

会場を意識してなのか、通常のコンサートホールでもこういう歌い方なのかは判然としない。

この日のプログラムも、音楽史的なパースペクティブがあって、ダウランドやパーセルがイギリスで活躍していた時期とヘンデルへ至る道を想起させる。影響が直接であれ、間接であれ、ヘンデルの前後左右に視野が広がる感じである。

 

 

 

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