ヘンデル『トロメーオ』(再)
ヘンデル作曲のオペラ『トロメーオ』を再び観た(カールスルーエ)。
前回はやや舞台から遠く上の方だったが、今回は舞台に近い。この劇場は古典的な馬蹄形の劇場ではないので、平土間と桟敷席に分かれているわけではない。比較的左右の幅が広く、二階(これも厳密に一階と分かれているわけではない)部分と重なる席は最小になっている。舞台向かって左の3列目には車椅子用の列があることに感心した。障害者の席が後ろの方の座席にあるのは日本でも見たことがあるが。車椅子の直後の座席は車椅子の人と同じ高さ(通常の部分は前席と後席が階段状になっているが、この席は車椅子の移動しやすさのため平らになっている)だから舞台が見えにくくなる。僕の席は、車椅子用の直後なのだが、たまたま車椅子の方がいなくて空いた状態になっていた。
ここで観ると(聴くと)前回よりもオルリンスキーの表現の細部がよくわかった。レチタティーヴォはやはり声を張り上げるわけではないので距離が離れると細部がぼけやすいのだ。全体として、セルセを歌っている歌手たちの方が声量が大きいように思う。キャリアも違うのだと思うが。オルリンスキーは、表現の細部の詰めがやや緩いのだが、流れにそってメリハリはついている。
舞台装置は豪華である必要はないのだが、衣装が現代服でしかもカジュアルなのは残念だった。舞台に登場人物が椅子に座ったりして、背を向けてはいるが居続けるのも意味不明。衣装がそれなりなのは、エリーザのみなのだ。音楽に集中すべき舞台である。ならCDでも良いか、というとさにあらず。ここのオーケストラは大変優秀でかつ古楽器(ピリオド楽器)を使っていて、それを生の音で聴けるのは貴重である。
セルセと比較するとトロメーオは登場人物が少ない。5人しかいない。合唱団もいない。最後に登場人物が一緒に歌うだけである。前にも書いたがレチタティーヴォはほとんどなくアリアやアリオーソが続くが駄曲がない。あとは指揮者、歌手次第だ。今回の歌手は5人の歌手のレベルの凸凹が少ない点はよかった。最後に近い Stille amare のテンポは歌手が求めたのか、指揮者が指定したのか、どちらだろうか。個人的にはもうすこし早くい方が良いと思った。そこだけ浮いてしまう、という印象を受けた。
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