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2020年2月21日 (金)

ドイツ・ヘンデル・ゾリステンのコンサート

ドイツ・ヘンデル・ゾリステンのコンサートを聴いた(カールスルーエ、州立劇場、大ホール)

指揮はジョリー・ヴィニカー(Jory Vinikour).シカゴ出身で1990年からはパリ在住とのこと。チェンバロを弾きながら指揮をする。チェンバロは、非常にテンポが速く、細かい微細な表情よりは曲の進行がどんどん進むことによって曲の形をあらわにすることを良しとする弾き方だ。指はおそろしくまわる。

この日のプログラムは前半、後半に分かれて1回の休憩。各曲の前にこの音楽祭の芸術監督ミヒャエル・フィヒテンホルツ氏のユーモアに富んだ解説が入る。

前半は、ヘンデルのオペラ『ロドリーゴ』から序曲、レンテメンテ、ジーグ、サラバンド、ブレー、マテロ、パッサカリア。管弦楽のみでの演奏である。次はジャン・フィリップ・ラモーのオペラ『イポリートとアリシ』から序曲、マーチ、ガヴォットI&II,恋するナイチンゲール、シャコンヌ。恋するナイチンゲールは本来ソプラノが入るのだが、その部分は今回は独奏ヴァイオリンによって演奏された。ヘンデル・ゾリステンによるラモーは独特である。フランス風のそれと比べると、線が太いというか強い線で描かれている。メロディを描くときの筆圧が強い感じなのだ。その分、どっしりと荘重になる。しかし、そうは言っても、現代オケではないから、バロックの響きな訳で、そこが独特の味わいなのである。

後半は、バッハ親子のチェンバロ協奏曲。もう少し正確に言えば、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(大バッハの長男)のチェンバロと弦楽と通奏低音のための協奏曲、F.41  とヨハン・セバスチャン・バッハのフルート、チェンバロと通奏低音のための協奏曲 BWV 1050(1852)(いわゆるブランデンブルク協奏曲第5番)。フリーデマン・バッハは初めての経験だったが、非常にチャーミングな音楽で心を奪われた。編成もそうなのだが、バッハから受け継いだものにヴィヴァルディ的な要素が加わった感じなのだ。流麗で、ところどころ愁いにとみ、不思議な転調にハッとさせられる。ハレのバッハと呼ばれているが、ハレの有力者とはうまく行かなかったようだ。これからもっと彼の作品を聴いてみたいと強く思った。

ブランデンブルクになると、楽団員の動きが身体的にも、音楽的にも明らかに違う。自分たちの自家薬籠中の音楽を自信を持って弾いているという感じがありありとある。リズムが跳ねている。こちらもそれに身体を揺すぶられる。自分が知らなかった曲の新しい魅力を教えてもらうのもいいものだが、こういう定番を真正面から直球勝負も心地よい。バッハ親子、それぞれに大満足です。

アンコールはヘンデルのオペラ『忠実な羊飼い』からシャコンヌ。管弦楽の演奏。二曲目はドメニコ・スカルラッティのチェンバロ曲K535を指揮者が嵐のようなスピードで駆け抜けるように弾いた。

名人芸を楽しませると同時に、ヘンデルを中心として同時代、前後への目配りの行き届いたインテリジェントなプログラムでもある。この長所は、この音楽祭のすべてのプログラムに通底している。そこもこの音楽祭の素晴らしいところだ。今年はマスタークラスがないのが少し寂しいが。

 

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