風呂本佳苗ピアノリサイタル
風呂本佳苗ピアノリサイタルを聞いた(東京オペラシティ リサイタルホール)。
初台のオペラシティは、今さらながら、不思議な命名でオペラを上演しないところがオペラシティなのである。オペラを上演する方は新国立劇場。
オペラシティの方にいくつかホールがあるが、リサイタルホールは初めてのような気がする。
ひさかたぶりのピアノリサイタルで、まず最初の印象は、グランドピアノ(スタインウェイ)は大きな音がするなあ、ということだった。これは評者が、最近、古楽器の演奏になじんでいるためであるが、改めて、チェンバロからフォルテ・ピアノ、ピアノへの変遷を思う。貴族の館で少数を対象に演奏されていた時代から19世紀に市民相手に大人数のコンサート、リサイタルと変わるにつれ、鍵盤楽器も鍵盤の数が増え、かつ音量も大きな音が出るようになったわけだ。そういう点に最近は注目されるようになり、ショパン・コンクールでもピリオド楽器(ショパンの時代のピアノまたはそのコピー)のコンクールが別に開かれるようになって、NHKでその様子を見たが、ショパン、リストの時代でも、まだ現代のピアノとは響きの点で異なることがわかり興味深かった。
さて、このリサイタルは、北への旅という副題と東日本大震災被災者支援チャリティコンサートという性格を併せ持っている。
北への旅というのは、プログラムを除くとわかる。グリーグ:ペール・ギュント第一組曲より、ガーデ:民族舞曲、四つの幻想小曲、ラフマニノフ:「音の絵」よりno2,5,9 ここで休憩 ベルワルド:二つのスウェーデン民謡の旋律による幻想曲、ニールセン:三つの小品、シベリウス:もみの木、パルムグレン:粉雪、シベリウス:フィンランディア (ピアノ編曲版)という構成。
ガーデやベルワルド、パルムグレンというのは初めて知った作曲家だし、ニールセンもこの曲は初めて聴いたのだが、個人的にはニールセンのこの三つの小品がプロコフィエフ的なところがあり、モダンで特に面白かった。他は、おおむねロマン派、国民楽派の時代に、北欧およびロシアにこういうピアノ音楽があったのだということを認識した。このプログラムの特徴なのか北欧のピアノ曲の特徴なのか、高音部がキラキラとトリルを多用して透明感を醸し出すものが多い印象である。ラフマニノフはちょっとそこにはくくりきれないが。
最近、後期バロック音楽がバッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディといった昔から有名だった作曲家の他にもハッセ、ポルポラ、ヴィンチなど実に多くの優れた作曲家がいることを痛感しているのだが、ロマン派、国民楽派の時代にも多様な作曲家がいたことを教えられた。
演奏の間には、奏者による簡潔な解説が入り、プログラムにも作曲者のプロフィールが紹介されてあり、多くの人にとって未知の作曲家に対する距離を縮める工夫がなされていた。
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