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2019年11月30日 (土)

チェスティ《ラ・ドーリ》その4

《ラ・ドーリ》の音楽は、オケ、指揮、歌手ともに素晴らしかった。17世紀のオペラは、カヴァッリなどに見られるように、recitar cantando が続くと、メロディーの乏しさに音楽的酸欠感を覚えたりすることもあるわけだが、このオペラでは全くそういう感じがなかった。

 プログラムにはチェスティがメロディーを結晶化させた、という意味のことが書かれている。女声2人のドゥエットなども実に見事だった。舞台上で二人が大きなブランコに乗り、手前と奥で入れ違うように漕いでいるのだが、リズムやハーモニーはぴったりあう。アリアも、かなりの数があり、ヘンデルなどの先駆け的要素がここかしこに見られる。と同時に、この演奏体験の充実、満足感は、演奏レベルの高さに由来する部分も相当あるであろうと感じた。

 オッタヴィオ・ダントーネの指揮、アカデミア・ビザンティーナの演奏。ドーリはフランチェスカ・アショーティ(アルト)。オロンテはルパート・エンティクナップ(カウンターテナー)。アルタクセルセはフェデリーコ・サッキ(バス)。アルシノーエはフランチェスカ・ロンバルディ・マッツッリ(ソプラノ)。トロメオはエメーケ・バラート(ソプラノ)。アルセーテはブラッドリー・スミス(テノール)。エラストはピエトロ・ディ・ビアンコ(バスバリトン)。ディルチェはアルベルト・アッレグレッツァ(テノール)。ゴロはロッコ・カヴァルッツィ(バス)。バゴアはコンスタンティン・デッリ(カウンターテナー)。これらの歌手は、非常にデリカシーを持って、しかも生き生きとしたリズムとテンポでチェスティを現代に蘇らせてくれた。重唱や掛け合いの精度の高さから相当に練習を積んだものと察せられる。その成果は聞き手の喜びとなってしっかり実っていた。

 

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