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2019年8月22日 (木)

ヘンデルのオペラ《オットーネ》

ヘンデルのオペラ《オットーネ》を観た(インスブルック、Theologische fakultat, Innenhof)。場所としては州立劇場の並びだが、小ホールで客席は1階のみ。人数は270名ほど。オケは20名弱だが、ホールが小ぶりであるので十分に鳴る。このサイズになると、リュートにPAを入れなくても、例えばチェロ1丁とリュートがアリアの伴奏をする際に実に良い音のバランスが出現し、この音のバランスは3階、4階があるホールでは無理があるのだと認識せざるを得ない。

弦楽が休んでいたり、他の楽器に先がけてリュートがパラン・パランと導入フレーズを弾くのは時にとても効果的なのだが、音のバランスが成り立っていなければ、聞こえないか、PAの音を聞くかの選択になってしまうのだ。そういう意味で非常に贅沢な音空間である。

指揮者はファブリツィオ・ヴェントゥーラ。オケはアカデミア・ラ・キメーラ。

楽団員は若い人ばかりに見えた。指揮ぶりは、概ね穏やかで、あまりアタック音を目立たせたりはしないし、ドラマティックに盛り上がる曲想においても疾走することはなく、音は古楽らしいが、曲作りは安全運転な感じである。それはオケの能力ということにも関係していると思われる箇所がいくつかあった。歌手もほぼ若手ばかりで、タイトル・ロールのオットーネがメゾのマリー・セイドラー。テオファーネがマリアミエッレ・ラマガット。ジスモンダがメゾのヴァレンティーナ・シュタットラー。彼女が声の成熟度や表現力において他の歌手より優れていた。アデルベルトがアルベルト・ミゲレス・ロウコ。マティルダがアンヘリカ・モンへ・トッレス。彼女は言葉が明快で、これで声に伸びやかさが加わればと思った。エミレーノのヤニック・デブスはバリトンで舞台姿を含めて声の表現力もなかなかのものだった。大物歌手はいないが、若い歌手の懸命の歌唱を聞くのも悪くない。ここでアジリタがもう少し回ればなどと思うこともあるけれど。

この上演はハレやゲッティンゲンでのヘンデル音楽祭(2020年)との共同プロダクションであるとのこと。演出は簡素な舞台で、奥の壁に窓がいくつかついていて、そこから他の登場人物が歌っている登場人物を盗み見ていることがあるという仕組みだが、不満はなかった。衣装も簡素であった。

 

 

 

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