マリオ・カナーレ監督の『情熱とユートピア』を見た(イタリア映画祭・有楽町朝日ホール)。
これは新作ではなく、アンコール上演で、2014年の作品。
タビアーニ兄弟監督がどう映画を撮ってきたかを、作品の一部とタビアーニ兄弟が故郷サン・ミニアートを旅するドキュメンタリーとタビアーニ作品に関わった関係者へのインタビューが組み合わされている。
出発点は、第二次大戦中に彼らの故郷で起きたドイツ軍による虐殺事件だ。これを短編映画にし、後には『サン・ロレンツォの夜』に仕上げている。彼らの父が反ファシストの弁護士で彼らはそれを継承している。
そのほか、トスカーナから出てきてどうやってローマで映画デビューをしたかや、彼らの二人のコンビネーションの塩梅や、出演した俳優のコメントが語られる。60年代、70年代には社会の動乱に呼応するように彼らも映画の革新を目指している。と同時に、彼らの語り口は常に明快である。映画製作においても撮影現場での指示は常に明快で、彼らにはすでに頭に絵ができているのである。だから、ストーリーに見合った場所を探すロケハンが楽しいのだという。
彼らは、巧みなストーリーテリングやそこにファンタジーを盛り込む術を心得ているが、同時に色や音楽で語ることも重視している。たしかに思想を言葉で語るなら本のほうが雄弁かもしれないのだが、映画ならではのイメージによる伝達は映画ならではのことだとあらためて認識させられる。思っていた以上に彼らは革命や新たな生き方の可能性を追い求めて映画を作っている、作ってきた人たちなのだった。
60年代の彼らの映画を筆者は見ていないことに気づいた。機会があればぜひ見てみたいものだ。
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