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2019年3月 1日 (金)

《アルチーナ》

ヘンデルのオペラ《アルチーナ》を再び観た(カールスルーエ)。

この日、州立劇場からメールが来て、今日は劇場スタッフの時限ストライキがあるので、セミステージでの上演となるという。ただし衣装、仮面はつけているとのことだった。
スタッフというのがどの範囲かは判然としなかったが、実際に行ってみるとクロークも休憩時間の飲食コーナーも通常通りだった。
舞台の上での変化はというと、背景は白い壁のみになっている。ただしその壁への映写は通常通り。また、いつもは舞台上、客席から向かって左側に大きな壁が奥手に向かってあり、最後にその壁を壊すと、魔女アルチーナの魔法で石やら獣になっていた人が出てくるという場面がある。その壁が向かって右側で、壁の向きがいつもとは90度違っていたことが1つ。この壁が出てくるタイミングがいつもよりずっと遅かった。もう1つは、結末に近いところで歌詞に虎の出てくる勇ましいルッジェーロのアリアがあるのだが、そこで振り回す剣に火がつくという演出があるのだが、この日は剣は振り回すものの火はつかなかった。つき損なったのではなく、つけるための準備の手順自体をしていなかった。
衣装はいつもと同じなので、演出に関して痛痒は感じなかった。
演奏は、第一幕は、ストライキのアナウンスにも関わらず来てくれた観客への思いもあったのか、オケも指揮も歌手たちも素晴らしかった。ところが第二幕になって、第一幕での観客の暖かい拍手に安心したのか(どうかはわからないが)、歌手たちは、指揮者が設定しているテンポを崩し、勝手に遅くしてしまう例が頻出した。つまり前奏の部分でのテンポが歌が入った途端にガクッとテンポが落ちる、あるいは歌っているうちに感情を込めるとともに落ちて元に戻らない。音楽とドラマの推進力が落ちてしまい残念だった。テンポを落とし悲しげな表情の厚塗りをせずとも、曲想がしかるべき叙情性を示しているならば、自然に現われ出でる表情があるわけで、曲を信じた方がかえってこちらに感銘を与えるのにと思った次第。
モルガーナ役の歌手など、よく通る綺麗な声なのだが、アジリタでずるずるとテンポが落ちるのがもったいないのだった。オロンテ役の歌手は、2幕以降、通常の声が出なくなり、レチタティーヴォも苦しげで明らかに声が小さかった。アリアも省略された。何か突然具合が悪くなったのだと思う。観客もそれを理解し、カーテンコールで彼へのブーイングは全くなかった。

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