« 宗教改革と廃仏毀釈 | トップページ | 《セルセ》 »

2019年2月23日 (土)

ロミーナ・バッソ演奏会

アルト歌手ロミーナ・バッソの演奏会を聞いた(カールスルーエ、クリスト教会)。ロミーナ・バッソをメゾ・ソプラノとする記述もよくあるが、カールスルーエのヘンデル音楽祭の公式プログラムにはAlt (アルト歌手)と記されている。考えてみれば、近年、ソプラノではない女性歌手はあまりにメゾソプラノばかりで、アルト歌手と呼ばれる歌手が少なくなっていると思う。何かコマーシャリズム的な理由でもあるのだろうか。低い声がよく響く歌手には、独自の魅力があると思うのだが。

珍しい曲目(といってもロミーナ・バッソはすでにこれらの曲を録音しているようだ)で、バロック期のラメント(嘆きの曲)を4曲。
伴奏は、マルケロス・クリシコスのチェンバロとオルガン。テオドロス・キトソスのテオルボ(リュートの大型のもの)、アンドレアス・リノスのヴィオラ・ダ・ガンバ(プログラムにはBassgambeとある。調べてみると、ヴィオラ・ダ・ガンバはドイツ語では単にgambeともいうのだがそれをtenorgambe とbassgambeに分けることもあるらしい。このあたり、多分ということで、認識が違っていたらご指摘いただければ幸いです)。
プログラムは、4曲。ジャーコモ・カリッシミ(1605ー1674)作曲の ’Lamento in morte di Maria Stuarda' (メアリー・スチュアートの死を嘆いて)、ルイジ・ロッシ(1598ー1653)作曲の’Lamento della Regina di Svezia’(スウェーデン女王の嘆き)、バルバラ・ストロッツィ(1619-1677, この時期珍しい女性作曲家)の'Lamento aus Diporti di Euterpe'(「エウテルペの気晴らし」から’嘆き’)エウテルペは9人の女神ミューズ(ムーサ)の1人。最後がフランチェスコ・プロヴェンツァーレ(1624ー1704)の’Squarciato appena havea' . 最後の曲はルイジ・ロッシの曲のパロディであるとのこと。ロッシのものはスウェーデン女王が夫の死の知らせを聞いての嘆きの曲。プロヴェンツァーレの曲も最初は厳粛な雰囲気をたたえているのだがやがてナポリの舞踊風の音楽が混じってくる。ついには、演奏者たちも踊りの掛け声(合いの手)をかける。
4人ともモンテヴェルディやカヴァッリと同時代人なわけだが、ロミナ・バッソと伴奏者のおかげで、相当に劇的な表情をたたえていた。一曲も10分を超え、聞き応えがある。
カリッシミの曲の題材が生々しい ので調べてみると、スコットランドの女王(元女王)のメアリー・スチュアートがイングランドの女王エリザベスにより死刑に処せられたのは、ヨーロッパ中を駆け巡るニュースで、スコットランドは、プロテスタントによるカトリックの処刑の地、殉教の地として捉える物語、詩、楽曲が大量に産み出されたのだという。カリッシミの曲もその一曲だと考えられる。
今までラメントをまとめて聞いたことがなかったので、その表情の深さ、幅に触れる良い機会だった。表情の豊かさは、おそらく演奏者の貢献も大なのであろうと推察する。
なおこれらの楽曲はyou tube などで聴くことができます。

|

« 宗教改革と廃仏毀釈 | トップページ | 《セルセ》 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ロミーナ・バッソ演奏会:

« 宗教改革と廃仏毀釈 | トップページ | 《セルセ》 »