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2019年2月26日 (火)

ドイツ・ヘンデル・ゾリステン室内コンサート

ドイツ・ヘンデル・ゾリステンの室内コンサートを聴いた(州立劇場小ホール、カールスルーエ)。

ドイツ・ヘンデル・ゾリステンの中の7人が演奏。オーボエ1、バイオリン1、ヴィオラ2、ヴィオラ・ダ・ガンバ1、テオルボ1、ファゴット1。ファゴットのローダ・パトリックがリーダー格で、進行も担当。《セルセ》の時は30数人、《アルチーナ》の時でも20数人で演奏しているので、7人になると音の厚みは薄くなるが、その分、響きの透明感が増す。何より、奏者との距離も近いので、対位法的な受け渡しが耳だけでなく、目でも見て取れるのが素晴らしい。音の、奏者同士の駆け引き、目配せ、息を合わせる調整が見える。音楽の呼吸を間近に感じることができるのは、オペラの時とは別種の魅力である。
最初はリュリのアルミードの組曲。リュリ(1632ー1687)はフィレンツェ生まれで1646年にフランスにつれていかれ、やがてフランスに帰化した。
次はヴィヴァルディのオーボエとファゴットのための二重協奏曲からラルゴ。
その次にヨハン・カスパー・フェルディナント・フィッシャー(1656-1746)の'Le Journal du Printemps' (春の日)第7組曲。ここで演奏者の奥の一段高くなった舞台にダンサーが2人登場。音楽に合わせてバロック・ダンスを披露した。これが本来の姿なのだろうと思う。すなわち、娯楽の要素として考えた時に、音楽を受け身で聞いているだけではなく、ダンスを見たり自分も踊ってみるという積極的なエンターテイメントだったのだろう。それを垣間見せてくれたダンサーの登場であった。フィッシャーはボヘミア出身だが、1695年にはバーデン・バーデン辺境伯の宮廷楽長となっている。カールスルーエから見ると地元のバロック作曲家ということになる。彼の音楽史的な位置付けはリュリによるフランス音楽をドイツにもたらしたということらしいが、確かに並べて聞くと類似は明白だった。バッハやヘンデルもフィッシャーの作品は知っていたとのことである。
ここで休憩。
後半は、まずヨハン・メルヒオール・モルター(1696-1765) の序曲ハ短調MWV3.9. ,モルターはさらにカールスルーエと縁が深い。バッハの生地アイゼナッハの近郊で生まれ、アイゼナッハのギムナジウムで教育を受け、1717年にはカールスルーエのバーデン=ドゥルラハ辺境伯の宮廷のヴァイオリニストになる。ここで結婚し8人の子をもうけている。1719−21年イタリアで作曲を学びヴィヴァルディ、アルビノーニ、A.スカルラッティらの影響を受けている。1722年から33年はカールスルーエの宮廷楽長を勤めて、晩年にはカールスルーエのギムナジウムで教えて、当地で亡くなった。まさにカールスルーエの作曲家なのである。ドイツ後期バロックから前古典派に至る過渡期の作曲家と言われれば確かにそんな感じのフレージングがある。旋律が対位法に受け渡されるのでなく、和音でジャジャジャジャと弾いてて受けたりするのだ(独特の面白さではあるのだが)。当然だが、過渡期の作曲家には独特の作風、興趣のあることもある。
最後はジャン・フィリップ・ラモー(1683-1764)のバレーオペラ《優雅なインドの国々》からの組曲。短い10数曲が演奏されたが、後半からバロックダンスの2人が加わった。たしかに、フランスのバロックは舞踊と強く結びついているし、一緒に演じた時に目と耳が同時に刺激されリズムの弾みに対してある相乗効果を感じるのだった。
以前にも触れたことがあるが、ヘンデル音楽祭は、単にヘンデルのオペラを上演する(それだけでも、このプロデュースのレベルは賛嘆に値いすると思うが)のみならず、ヘンデルを中心に時代の前後、地域的な隣接地域の同時代人に目配りがなされ、バロック音楽全般に対する理解、感性が深められるように構成されていることに気づく。ドイツの音楽文化の厚みに敬意を表したい。こういうプログラムによってより耳の開かれた聴衆が育つのだと思う。クラシックといえばウィーン古典派からロマン派という傾向が日本ではいまだに顕著である(日本でも小さめのグループの活躍は目をみはるものがあるのではあるが)が、そこから1歩、2歩、耳を開いてみれば、聞こえてくる音の風景は、異なる香り、異なる味わいに満ち、ワクワクするものだと思うのだが。

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