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2018年10月21日 (日)

『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト』

浦久俊彦著『悪魔と呼ばれたヴァイオリニストーパガニーニ伝』(新潮新書、760円)を読んだ。

パガニーニについてはヴァイオリンの超絶技巧の持ち主だったという一般常識と、彼の作った曲を聴いて音楽的にはあんまりなあ、というのがこれまでの評者の極めて貧困なパガニーニ経験であった。
この本を読むと、パガニーニが自分のパフォーマンスをどうプロモートしたか、どうやって演奏会をオーガナイズしたか、などがわかるし、当時の人がどんな具合に熱狂したのかもわかる。
音楽家として、ロッシーニやベルリオーズとは親しくしていて、ロッシーニは『マティルデ・ディ・シャブラン』の初演で予定していた指揮者が具合が悪くなり急遽パガニーニに指揮を依頼しているのだ。また、パガニーニが長年求めていたストラディヴァリウスのヴィオラを入手した時に、それに向けた曲を依頼してベルリオーズが作ったのが『イタリアのハロルド』だった(ただしパガニーニは気に入らなかった)などというエピソードが紹介されている。
若い時に美男子で女性にモテたというのはリストと同じだな、などと思うが、時間的にはパガニーニが先。ただし、パガニーニはとても病弱で後半生は病魔との戦いに明け暮れている。当時の治療法も下剤を大量に用いたり、水銀を使用したりと、今から思えばむしろ身体に悪い治療をしているのだ。
当然のことながら、パガニーニはヴァイオリンをはじめとする弦楽器に関心があり、ストラディヴァリウスを何台も持っていたのだが、本人の使用楽器はグァルネリのカノーネというのも興味深いエピソードだ。
カトリック教会との確執もなかなかに根深いものがあり、死後すぐには埋葬許可が出ず、彼の遺骸は放浪を繰り返す。
単にヴァイオリンが超絶的に上手な色男というのでは全くないパガニーニ像を得た。

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