« マテウッツィのマスタークラス(3) | トップページ | 『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト』 »

2018年9月23日 (日)

マテウッツィのマスタークラス(4)

6人目はメゾソプラノのWさん。Mozart の《イドメネオ》からイダマンテのアリア'Il padre adorato' (愛しい父よ)。ここでは、喉が疲れている場合にどんな注意が必要なのかの話。曲に入る前に発声練習を入念にした。ハミングでの発声練習もあった。ミミミミミーという感じで歌うのだ。喉の調子が万全でないときは声を広げないで集める。声はマスケラから出す。ヴィヴラートをかける。

7人目はテノールのSさん。ドニゼッティの《Il duca d'Alba》のアリア 'Angelo casto e bel'.(清らかで美しい天使)。 ここでは息継ぎの仕方の指導。基本的には、しゃべるのと同じ。学生に歌わせたあとで、同じ歌詞を語らせ、それと同じように息継ぎをしないで歌ってみなさいとチャレンジさせた。すると息を大事にして歌うことになるので後半が柔らかい音になったのは見事な変化だった。

ここでも子音の指導は細かく、例えば hanno, fanno の n の二重子音を丁寧に出すようにとのこと。

また息を閉じ込めずに柔らかく歌うというのは、実際に歌ってもらうとよくわかるのだ。マテウッツィがお手本を示す時には、どこにも変な力が入らず、ストレスのない声の出方がどう言うものかが眼前に示される。何人かの学生は、緊張して肩やのどに力が入らないように、試しにここで歩きながら歌ってみるようにと指導があった 。動くことに気を取られ、肩や喉まわりの緊張がほぐれる人もいたし、歩いても緊張したままの人もいた。むずかしいものだ。

マスケラに当てると言うのも、指摘を受けた学生が何度も繰り返して、少し良くなったとか、大体オーケーとか先生に言われているのだが、そう言う変化を聞き、なおかつ先生のお手本を聞くと、ちゃんとマスケラに当たった音がどう言うもので、十分当たっていないとどう言う音・声かがわかるようになってきた気がする。

また何人かの学生が指摘されていたが、i の音の時に、声がくぐもってしまったりすると、すかさず i (キやミなども)も響かせてと言う指摘があり、たしかに、工夫するとイ行でも響く音・声は出るのだった。

マテウッツィが歌うと余計なストレスのかからない声・音が澄んだ響きかが良くわかる。これが基本で、劇的な表情をつける時にはパルランテ(語るように)なって良いわけである。マテウッツィの授業では基本が徹底的に叩き込まれる。

そういえば筆者は文学系であったが、大学院の授業でもひたすら大きな辞書の引き方を徹底的に学ぶような授業があって、それは修業みたいなものなのだけれど、後々役に立つのである。歌手の方々は発声が最重要なのは言うまでもないだろう。

長時間にわたる聴講であったが、興味は尽きなかった。気がつくのが遅く、1日しか聴講できなかったのが残念なくらいだ。

マテウッツィ先生やピアノ・通訳の高島理佐氏、学生、大学院生の皆様、国立音大の関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

|

« マテウッツィのマスタークラス(3) | トップページ | 『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: マテウッツィのマスタークラス(4):

« マテウッツィのマスタークラス(3) | トップページ | 『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト』 »