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2018年8月26日 (日)

ヘンツェ 《The Bassarids》

ヘンツェのオペラ《The Bassarids》を観た(ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ劇場)。

素晴らしい演奏であり上演であった。久しぶりに現代のオペラに心揺さぶられる思いをしたし、演出というものの意義を深く感じる上演であった。
英語のタイトル The Bassarids というのは馴染みのない単語だが、つづめて言えばバッコスの信女のことだ。The Bassarids というと女性限定でなく、男女を含むのだという。バッコスはバッカスでディオニソスである。この信者たちは、狂乱状態で踊りを踊ったりするという。
このオペラの大元の原作はエウリピデスの『バッコスの信女』である。
それを原作として W.H.オーデンとカールマンがリブレットを書き、ヘンツェが作曲をした。ただし、オーデンらが書き上げたリブレットに曲がつけられる際に、歌詞が省略された(別の言い方をすれば、曲がつけられなかった)部分が細々とあちこちにあり、また、長いセリフが短めに書き換えられたものもいくつもある。これはよくあることだ。作曲家の作曲技法上の都合の場合もあるし、彼の演劇観から省略したほうが良いという判断をする場合もあるだろう。
このオペラの実演を観るのは初めてだが、大規模なオーケストラでフェルゼンライトシューレのオーケストラボックスには収まりきれず、打楽器が右上の側面に鎮座していた。
ヘンツェの音楽は12音技法やセリエの特定の技法に縛られず、調性音楽的な部分、アリア的部分が自由に入れ替え可能になっていて、聞いていて覚えてしまうフレーズ、感覚的喜びにあふれる曲が多い。
指揮はケント・ナガノ。大規模オケをうまくさばいていたと思う。ディオニソスはSean Panikkar.
若い王ペンテウスはRussell Braun.  彼が女装してバッコスの信女に紛れ込むのだが見つけ出されてしまうというストーリーなのだが、その場面はなぜか 寝室で展開された。おそらくは母息子の近親相姦的関係が示唆されているのだと思うが、ペンテウスが恰幅の良い男性なので、彼の女装姿は妙な迫力を持って舞台を支配した。ペンテウスの祖父で引退した王カドモスはWillard White. カドモスとディオニソスが黒人であるのが配置の妙で、ペンテウスもカドモスの孫だが、ディオニソス信仰を禁じる。しかし、ディオニソスは、カドモスの娘セメレがゼウスの種を宿して産んだ子なのだ。ティレシアスは、Nikolai Szemeredy. ペンテウスの母アガヴェはTanja Ariane Baumgartner. この人は歌もだが、演技に存在感があり、その肢体の美しさが息子ペンテウスとの間の近親愛を説得力高いものにしていた。狂乱の場面での表情も見事でオペラ歌手で演技の重要性を久しぶりに認識した。アガヴェの妹はVera-Lotte Bocker.
セメレの侍女ベロエがAnna Maria Dur.
劇全体としては中間にインテルメッツォが入るのでそれについても書くべきだろうが、とりあえずこのへんで。

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